その燃費、基準はナニ? 消費者に誤解与える“低燃費”相場英雄の時事日想(1/3 ページ)

» 2011年10月06日 08時01分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『株価操縦』(ダイヤモンド社)、『偽装通貨』(東京書籍)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 「1リッター当たりの燃費、世界最高水準」――。

 日本の自動車メーカーの技術開発が進化するにつれ、ハイブリッドやEV(電気自動車)でさまざまな新技術が開発され、市場に送り出されている。これらの動向を伝えるメディアにとっても、クルマをめぐるニュースは第一級の素材であることは間違いない。ただ、「1リッター=◯△キロ」に固執するあまり、消費者に“低燃費”の実態に関して、誤解を与える恐れがある記事が続出しているのだ。

実燃費と大きく乖離した限界値

 「トヨタ新型ハイブリッド車、1リッター40キロ弱 世界最高」――。

 これは9月28日付の日本経済新聞朝刊(参照リンク)に載った記事の見出しだ。

小型ハイブリッド車「プリウスC」の試作車。日本では「アクア」の名称で発売する予定(出典:トヨタ自動車)

 トヨタ自動車が来年初に発売する小型ハイブリッド車「アクア」に関するもので、同社の看板車種である「プリウス」よりも燃費性能に優れている、というのがウリ。多くの読者が見出し中の「40キロ」という文字に注目したはずだ。

 消費者の環境意識の高まりを受け、自動車メーカーの開発陣は日夜主力商品の技術改革に追われている。40キロという数字は、開発スタッフの努力のたまものにほかならない。

 しかし、筆者がこの記事の中で最も注目したのは、40という数値ではない。日経が記事の中で「JC08モード」に触れたことなのだ。

 「JC08」(ジェーシーゼロハチ)とは、実際に消費者がクルマを使用する際の環境に近い状態でデータを取る方式だ。日経が「アクア」に関して触れているのは、このJC08モード。同じ記事の中で、既存車種であるプリウスの燃費にも触れているが、ここでも同じモードで弾き出された数値(同32キロ)を使用している。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.