「津波で1階は全滅だった。自分の部屋がある2階は大丈夫だったが、ゲームは1階に置いていて、ダメだった。最初のころは学校は臭かったなあ。泥だらけで、全国から来たボランティアの人たちが泥をかき出してくれた」
ようやく仮設住宅に入ることになった菅原君の家族は6人。「やっと普通の生活に戻れる」とほっとしている様子だ。
そんな菅原君の今の楽しみは、携帯型ゲーム「PSP」で遊ぶこと。5月頃に親から、「何のゲームもないから」ということで、買ってもらった。モンスターハンターやドラゴンボール、バトルスピリッツなどのソフトで遊んでいる。
夏休みはどうするのだろうか。「たぶん、どこにも行かない。海は嫌だ。臭いし、汚いし。人が浮いているかもしれないし。かといって、県外に行くのもめんどくさいし。市民プールも、ボーリング場もだめ。ゲーセンのゲームは面白くない」
菅原君のインタビュー中に隣にいて、「海には行くなよ」と言ったのは、板倉凱士君(中学校1年生)。避難所になっている体育館で家族5人で暮らしている。
「俺の母さんは津波で亡くなった」
板倉君の母親は今回の震災で、津波に呑まれて亡くなった、という。深刻なことだが、おどけながら話していた。
取材をしていると、親が震災で亡くなったという話を冗談っぽく話をしたり、他の子どもの前であっさり話をするといった場面に何度も遭遇する。そのたびに、それ以上話を聞くべきかどうか悩む。特に他の子どもがいる場合は難しい。この時も悩みながらも、その会話を終わらせた。
こうした取材上の悩みについて、取材で知り合った心理学の研究者に聞いてみたことがあった。その研究者は「そういう場面は私にもあり、それ以上話をするかは悩む。ただ、あまりにも冗談っぽくしていたり、他の子どもの前では感情を吐き出せない場面では、私も話をつっこむは避ける。継続して話を聞く機会があるかがポイント」と話していた。
私が板倉君と出会ったのは、この時が初めてだった。今後、継続して取材ができるのなら、「話を聞いてみよう」と思った。
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