上司は部下の仕事にどこまで干渉するべきか?吉田典史の時事日想(1/2 ページ)

» 2011年09月09日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

著者プロフィール:吉田典史(よしだ・のりふみ)

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2005年よりフリー。主に、経営、経済分野で取材・執筆・編集を続ける。雑誌では『人事マネジメント』(ビジネスパブリッシング社)や『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)、インターネットではNBオンライン(日経BP社)やダイヤモンドオンライン(ダイヤモンド社)で執筆中。このほか日本マンパワーや専門学校で文章指導の講師を務める。

著書に『非正社員から正社員になる!』(光文社)、『年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文舘出版)、『あの日、「負け組社員」になった…他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)、『いますぐ「さすが」と言いなさい!』(ビジネス社)など。ブログ「吉田典史の編集部」、Twitterアカウント:@katigumi


 先日、考え込むことがあった。ここ数年、悶々としていたことに風穴が少し開いたような気がした。

 それは、人事コンサルタントの川口雅裕さん(イニシアチブ・パートナーズ代表)に取材をしていた時だった。川口さんは関西を拠点に組織・人事関連のコンサルティング、研修、講演を行っている。1980年代後半に、当時、リクルートと肩を並べるほどの人気企業だったリクルートコスモスに入社。その後は人事労務に関わり、20数年のキャリアがある。

 私が尋ねたのは、会社という組織の中で仕事をすることの意味についてだった。まず、このような質問をした。

 「部下が上司の了解を得ることなく仕事を進めた結果、上司から信用を失い、苦しい立場に追いやられたらどうすべきか?」

 川口さんは「その部下は会社で仕事をすることの意味を心得ていない」とした上で、こう切り出した。

 「会社で仕事をするならば当然、上司の承諾を含めて、組織として合意するという手続きを踏まえる必要がある。そのことに関する理解と、承諾や合意を得るための力を身に付けないと、何事もうまくいかない」

 これは、若い会社員からすると難しい。ついつい、無視をしたくなる上司はいる。上司である課長が無能であるがゆえに、飛び越えて部長に話を持っていきたくなる時もある。

 しかし、川口さんの指摘通り、「上司の承諾を含めて、組織として合意するという手続きを踏まえる」ことをしないと、ほぼ間違いなく行き詰まるはずだ。

 これは私の認識なのだが、会社員は個人事業主ではない。経営者でもない。会社員が仕事をしていく力とは、組織の中で認められることが大前提。個人事業主として例えば、その分野で国内ナンバー1であったとしても、組織で生きていくことができない限り、会社では“優秀”と言わない。

 ところが、会社員経験の浅いコンサルタントや経済評論家など、さらに個人事業主の経験が長い人は、このあたりへの考察が甘い。それどころか、「職務遂行能力を高めれば、社内で活躍できる」と言い始める。私にはこれらは事実にもとづかない、浅い見方にしか見えない。

 会社員は所属部署では、上司らとの間で仕事において詰めるところは徹底して詰める。その中で、小さなコンセンサスを得つつ、信用を獲得し、承認にこぎつけるべきなのである。これを極力早いスピードで確実に着実にできる人が“優秀”と言えるのだ。

 誰の承認を得ることもなく、勝手に仕事をして高い業績を出しても、束の間の自己満足で終わる。周囲の人は、そんな戦略性のひとかけらもない、エゴイストな人に付いていかない。また、付いていくべきではない。

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