円高報道がパターン化! ヒナガタ原稿なら子供にも書ける相場英雄の時事日想(1/3 ページ)

» 2011年08月18日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]

相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール

1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『株価操縦』(ダイヤモンド社)、『偽装通貨』(東京書籍)、『偽計 みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎』(双葉社)などのほか、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載。ブログ:「相場英雄の酩酊日記」、Twitterアカウント:@aibahideo


 米欧先進国財政への信認低下に起因した円高が続いている。政府・日銀による円売り・ドル買いの市場介入を巡る思惑が日夜伝えられているほか、銀行のディーリングルームからの中継が増加するなど、「円高」は第一級のニュース素材であることは間違いない。

 ただ、かつて外為報道に携わった人間からみると、一連のニュースはどれも同じ、パターン化が顕著だ。大手マスコミの実務に触れながら、円高問題とマスコミのあり方を分析してみる。

円高進行時のヒナガタ

 当コラムで何度か触れてきたが、在京の新聞や通信社、テレビ各社の経済部には、日銀や東証に常駐する市況担当記者がいる。各社の日銀クラブや兜クラブのブースには、過去のドル・円相場や日経平均株価の推移を記したデータが保存されており、市況が急変した際には即時対応できるよう準備されている。

 「株価、今年最大の下げ幅」「円高、◯カ月ぶりの水準に急騰」といった見出しとともに、各社が速報を出すわけだ。

 大手と呼ばれるマスコミ各社だけに、データは精緻に整理され、保存されている。ただ、筆者が不満を抱くのは、ここから先の段階なのだ。

 日経や内外の通信社を除けば、市況担当の異動サイクルは速い。半年から1年程度が大半であり、腰掛け的なポストである社も少なくない。このため、クラブ内で代々引き継がれてきた「取材先リスト」にあるディーラーやエコノミスト、アナリストにしか取材しないのだ。

代々引き継がれている取材リスト(写真と本文は関係ありません)
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