38歳、それは会社員にとって“あきらめ”の年吉田典史の時事日想(1/3 ページ)

» 2011年08月12日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

著者プロフィール:吉田典史(よしだ・のりふみ)

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2005年よりフリー。主に、経営、経済分野で取材・執筆・編集を続ける。雑誌では『人事マネジメント』(ビジネスパブリッシング社)や『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)、インターネットではNBオンライン(日経BP社)やダイヤモンドオンライン(ダイヤモンド社)で執筆中。このほか日本マンパワーや専門学校で文章指導の講師を務める。

著書に『非正社員から正社員になる!』(光文社)、『年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文舘出版)、『あの日、「負け組社員」になった…他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)、『いますぐ「さすが」と言いなさい!』(ビジネス社)など。ブログ「吉田典史の編集部」、Twitterアカウント:@katigumi


 38歳。この年齢は会社員にとって「あきらめ」の年と言える。このあきらめができないと、今後の人生は絶望的と言える。あきらめれば、きっと希望に満ちた人生になる。

 私が会社を離れ、1人で仕事をするようになったのもこの時だった。会社員をすることをあきらめた。この20年間、取材で知り合ったベンチャー企業の経営者、個人事業主は数百人になる。その大多数は38歳までに勤務していた会社にあきらめを感じ、辞めている。40〜50代になって独立する人もいるが、私が見てきたのはわずか10数人。全体の5パーセントに満たない。

 38歳は独立をするならば“デッドライン”とも言えると思うが、私は読者に独立をうながすつもりはない。むしろ、経験論で言えば家やマンション、クルマ、さらには家族の生活費などを工面するという点で積極的には勧めない。さまざまな観点から、冷静に慎重に検討し、決断をするべきである。

 会社を辞めることだけが「あきらめ」ではない。それとは反対に例えば、「俺は会社に骨をうずめる。大いに仕事をして成りやがってやる!」と決めるのも立派なあきらめ、つまり決断ではないか。

会社員が絶えずぶつかる壁

 ここでは読者が会社に残る決断をしたことを想定し、論を進めたい。まず前提として、38歳で遅くとも管理職予備軍(課長補佐など)になることだ。そうでないと今後、昇格という点では厳しい戦いになる可能性が高い。

 20代のころから、次のことは意識しておきたい。会社の評価は20代のころからの積み重ねである。38歳前の数年間だけの成績で昇格が決まる可能性は低い。20代のころからその人の持つ、「仕事ができる」「できない」とったイメージは大切である。それにともなう、社内の口コミも見逃せない。これらが折り重なってその人の評価となる。これが、人間社会というものだ。

 38歳以降、会社員が絶えずぶつかる壁は主に次の3つである。遅くとも30代前半からは、このことを意識したい。

・管理職

・専門職

・リストラ

 それぞれを具体的に見ていきたい。管理職とは課長や部長を指すが、今後、総額人件費を一段と削る会社は多い。そのためにこれらのポストは一層、減っていく。管理職になってもさらにぶつかる壁は、「部下のいない管理職」である。部下がいないから、結局、非管理職のまま。つまり、プレイヤーとして仕事をするのみ。部下の指導や育成といったマネジメントには縁がない。

 この路線に進むならば「今後は徹底してプレイヤーとして仕事をしていく」と、ある意味であきらめることが大切である。同世代で部下のいる管理職に嫉妬している場合ではない。後述するが、むしろ、発想を変えて専門職になるくらいの覚悟で臨むべきである。今後、多くの会社はこの「部下がいない管理職=専門職」の考えを現場に浸透させてくる。それは、今のうちからあきらめておこう。

 部下を持つ管理職になっても当然、さらなる昇格を競い合うことになる。ここでも「競争は避けられない」とあきらめることが大切だ。ここでおさえるべきは、次のことである。

 「3年間ならば、部下の育成をしなくとも、部署の業績を上げることはできる。4年目以降、そこの部署に残るならば1年目から部下の育成をすること」

 これはすでに部下を持っている人ならば、意味が分かるだろう。仮にあなたが営業部の課長になったとする。在任期間が3年以内で、4年目以降は他部署に異動することが確実ならば、あえて部下の育成をする必要はないのかもしれない。

 部下の育成をゼロからしてそれが形となって現れるのは、4年目以降が多い。つまり、あなたの業績にはなりえない。次の課長、言い換えればライバルのために懸命に仕事をするようなものだ。「厳しい競争社会で、そんな悠長な考えでいいのか」と私は問いたい。

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