東京電力株は暴落途中で売り抜けられなかったのか?誠 Weekly Access Top10(2011年6月18日〜6月24日)(1/2 ページ)

» 2011年06月30日 14時56分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

 給料や人事関係の記事が上位に入る中、「『私も、被ばくした』――蓮池透が語る、原発労働の実態(前編)」が先週、先々週に続いてランクインした。今週は6月28日に東京電力の株主総会が開催され、原発事故問題をめぐって6時間以上も紛糾したようである

 東日本大震災が起こった3月11日、東京電力の株価は2130円台近くで推移していたが、14時46分に揺れた後、売りが殺到したことから急落、2121円で15時に取引を終えた。

 だが、ここで売り抜けられた人は幸運。翌週3月14日からは3営業日連続で場中に寄り付かず、全株一致で寄ったのは3月17日でその株価は741円。最低売買単位の100株を持っていただけでも、3月11日に売り損ね、3月14日から毎日売り注文を出していたら14万円近くの損失を被ったことになる。東京電力は配当が高めの優良株と市場ではとらえられていたので、年金資金などを投入していた投資家は本当に大変な目にあったと想像する。

どうすれば損失が抑えられたか

 株価が一気に3分の1になったわけだが、実は最善を尽くせば、いくつか損失を抑えられる方法があった。

 1つは夜間取引である。SBI証券や楽天証券、GMOクリック証券などで利用できるジャパンネクストPTSでは、19〜翌2時のナイトセッションの取引で東京電力株が1900円台で取引されていたように記憶している(節電のため、3月14日以降のナイトセッションは休止している)。カブドットコム証券などではカブドットコムPTS、マネックス証券ではマネックスナイターがあるので、昼間に売り損ねてもこうした夜間市場で買い手を探す方法があった。

 しかし、3月11日時点では地震そのものや津波が注目されていたので、当日の夜間取引の時間帯までに原発事故の影響を考えて東京電力株を売ろうと思った人はそれほど多くはなかっただろう。急落を見て、むしろ絶好の買い場と思った人も少なくなかったはずだ。多くの東京電力株主は3月12日以降の水蒸気爆発などを見て、損切りを考えたのではないだろうか。

 では、3月14日以降にできるだけ損失を抑えて売ろうとするなら、どうすれば良かったのか。その答えはストップ安での買い注文の配分ルールにある。

 数千万株の売り注文が殺到していた東京電力株だったが、原発事故早期収束に賭けて果敢に買い向かう投資家もいたために、3月14日にはストップ安の1621円で177万5800株、3月15日には1221円で212万5400株、3月16日には921円で625万1000株が大引けで取引成立している。もちろん結果論ではあるが、3月14日に1621円で売れていれば、3月17日に741円で売るより大分損失は抑えられただろう。

 「例えば売り注文が5000万株で買い注文が177万5800株だったら、自分の売り注文が通る可能性は3%ぐらいだよなあ」と何となく思っている人も多いのではないだろうか。しかし、それは誤りである。証券会社にもよるが、ストップ安での買い注文の配分は単純な抽選では行われないからである。

 まず、ストップ安での買い注文の配分を行うに当たっては、ストップ安の価格に発注している証券会社ごとに売り注文の数量を合算し、売り注文数量の多い証券会社から買い注文を1単位ずつ配分、すべての証券会社に配分するとそれを2順、3順と繰り返していく。

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