「震災のせい……」と言い訳をする、ダメな経営者吉田典史の時事日想(1/4 ページ)

» 2011年06月17日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

著者プロフィール:吉田典史(よしだ・のりふみ)

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2005年よりフリー。主に、経営、経済分野で取材・執筆・編集を続ける。雑誌では『人事マネジメント』(ビジネスパブリッシング社)や『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)、インターネットではNBオンライン(日経BP社)やダイヤモンドオンライン(ダイヤモンド社)で執筆中。このほか日本マンパワーや専門学校で文章指導の講師を務める。

著書に『非正社員から正社員になる!』(光文社)、『年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文舘出版)、『あの日、「負け組社員」になった…他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)、『いますぐ「さすが」と言いなさい!』(ビジネス社)など。ブログ「吉田典史の編集部」、Twitterアカウント:@katigumi


 「3月11日の震災以降、景気がまた悪くなった。本当に困りますよね」――。

 数週間前、杉並区の中央沿線某駅から歩いて3分ほどの居酒屋の主人から、こんな言葉を投げ掛けられた。私は、この言葉に違和感を覚えた。

 この店には、6年ほど前から半年に1度のペースで行く。ビールを数本飲んで、枝豆を食べて1500円以内ですむ。「価格破壊の店」とは呼べないが、値段が安いので気が向けば寄るようになった。ここは50代後半の主人が1人で営む個人店で、アルバイトの店員はいない。主人によると、この1〜2年の月の売上平均は80万〜90万円で、ここから経費が40万〜50万円ほどかかるようだ。「これでは人を雇うことができない」という。

 客は少ない。店内は15人ほど入れるスペースだが、私が行った時は多くて2人。その理由はいくつもある。まず、外観が汚い。看板は文字のペンキがはげて、読めない。入口のドアは2キロぐらいの重さがあるので、なかなか入れない。室内は、魚の腐ったような異臭が漂う。

 ただし、30種類ほどの料理の中で「〇〇(店の名前)鍋」の味は、私がここ10年くらいの間に食べた鍋料理の中では一番おいしいように思えた。もう1つのささやかな魅力がある。それは、タバコを吸いたい放題で構わないということ。主人もヘビースモーカーなので、周囲に気を遣う必要がない。

 だが、主人は対応がどうも未熟なのだ。例えば、夏であってもビールが冷えていない。客にもぶっきらぼうで、嫌いな客には挨拶すらしない。これでは客が減るのが分かる気がするが、本人は「震災で不況になり、客が大幅に減った」と繰り返す。「自分の怠慢で経営ができていないから、客が近寄らない」とは言わない。

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