先週最も読まれた記事は「ネトゲ婚はアリ?――廃人同士で結婚してみた」。筆者の野島美保さんがオンラインゲームで出会った男性と結婚した実体験を記したものである。
2008年のアイシェアの調査(参照リンク)によると、「周りにオンラインゲームを通じて異性との出会いを経験した人がいる」という割合は14.0%。20代では28.6%と4人に1人以上いることになるので、現代の若者ではそれほど珍しいことではないのかもしれない。
とはいえ、Twitterやはてなブックマークのコメントでは「きょ、教授! なにやってんすか!」「ネトゲ婚…衝撃的!!!」といった声が散見された。「さっき先生の授業受けていたよ」というツイートも見かけたので、その後、野島さんが学生から何か聞かれたかどうか気になるところである。
それなりにオンラインゲームで遊んでいる筆者にとって、ネトゲ婚はしばしば聞く話である。しかし1点、意外に思ったことがあった。次の文章である。
オンラインゲームには、1人で剣のレベルを上げるだけでは先に進めなくなる“壁”がある。ほかのユーザーとパーティを組んで、傷を癒やす魔法をかけてもらい、互いに助け合わないと何もできない。現実世界では1人でいるのが好きなのでマイペースでやってきたが、ゲーム世界で初めて他者を強く求める気持ちが芽生えた。
ゲーム世界では、レベルが高いだけでその人が魅力的に見えてくる。彼は、単純にレベルが高かっただけでなく、蘇生能力を持っていた。一度死んでも、息を吹き込んでくれる。そんな強烈な体験は、現実ではなかなか得られない。
筆者は「おっ」と思ったのだが、読者の方々はいかがだろうか? ポイントは野島さんが前衛、相手の男性が後衛であるところである。
オンラインゲームではある職業(ジョブ)を選んでプレイするシステムが一般的だが、戦闘シーンでその役割は大きく4つに分けられる。
戦闘中の位置取りでは、打撃職のアタッカーとタンクが前衛、魔法職のアタッカーやバッファー、ヒーラーが後衛になる。
2004年に『ファイナルファンタジー11』でプレイヤーによる“国勢調査”(参照リンク)が行われたことがある。プレイヤーの実際の性別や年齢などが、ゲーム内での選択にどのような影響を与えているかを調べたものである。サンプル数は603と、プレイヤー主導の企画としては非常に多いのが特徴だ。
調査の「ジョブ別統計」を見ると、男性の職業選択では前衛:後衛=61%:39%なのに対して、女性では前衛:後衛=37%:63%と対照的なデータが示されている。FPS(一人称視点シューティングゲーム)に代表される戦闘に特化したゲームのプレイヤーは男性がほとんどなので、男性が前衛を好む傾向は恐らくほかのオンラインゲームでも大きくは変わらないだろう。
つまり、前衛の野島さんも、後衛の相手の男性も、それぞれの性別では少数派なのである。アタッカー+ヒーラーの組み合わせは多いが、女性アタッカー+男性ヒーラーの組み合わせは普通と逆だなあと思った次第である。
野島さんが結婚したのを見て、「自分もオンラインゲームで婚活できるかも」と思った人ももしかするといるかもしれない。しかし、婚活しようと思うと、ゲーム内でどの職業を選ぶかが非常に重要になる。多くの場合、数人でパーティを組んで冒険に出かけ、その冒険の過程で仲良くなっていくわけだが、不人気な職業を選んでしまうとパーティに入ることが難しくなるからである。
では、どの職業でプレイするとパーティに入りやすいのか?
答えは1つ、ヒーラーである。ヒーラーがいないとパーティが成立しないことが多いので、基本的に常に歓迎される存在になれるのである。ヒーラーは攻撃力が弱めに設定されているため、1人ではプレイしにくいのだが、パーティに入ることを考えると理想的なのである。
だが、婚活を考えると、必ずしもヒーラーがいいとは言えない場合がある。『ファイナルファンタジー11』の調査を再度見ると、女性が最も好んでいる職業がヒーラー特化の白魔道士(24%)であることが分かる。ほかのゲームでもこの傾向は変わらないだろう。
そして重要なのは「ヒーラーはたいていの場合、パーティに1人いれば十分」ということである。つまりヒーラー同士は仲良くなりにくい→男性のヒーラーは女性の24%を占めるヒーラーと仲良くなりにくいということになるのだ。婚活のターゲットが4分の3に減ってしまうのは大きな痛手だろう。もちろん、女性のヒーラーも男性のヒーラーと仲良くなりにくいのだが、男性のヒーラーは女性ほど高い比率ではないのでそれほど気にしなくてもいい。
そのため、男性はヒーラー以外のパーティに入りやすい職業を選ぶ必要がある。一般的に、アタッカーは人数が多過ぎて、バッファーはいなくても良かったりするので、筆者がお勧めするのはタンクである。タンクはアタッカーも兼務できるので、ヒーラーのように同職の異性の人数を気にしなくてもいい。
ただ、必要とされる職業であっても、腕が悪いと愛想を尽かされてしまうので、ある程度のプレイスキルは身に付けないといけない。現実社会と同様なのだが、花嫁修業のようなものだと思って、修行に励んでいただきたい。
多くの人と知り合いたいなら、アイテムの生産をするスキルを磨くのも有効という人もいるかもしれない。素材の調達やモノの売買で必然的に他人と関わるからである。
しかし、他人に頼られるようになるほどのレベルになるのはハードルが高いし、高レベル者同士ではしばしば顧客を巡っての争いが起こったりする。高レベル者が少数だと、相手を貶めて自分が得るメリットが、相手を叩く労力を上回ってしまうため、しばしば誹謗中傷合戦になってめんどくさい。そのため、婚活のための遊び方としてはあまりお勧めはしない。
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