“被災者はかわいそう”と思う心理吉田典史の時事日想(1/3 ページ)

» 2011年05月20日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

著者プロフィール:吉田典史(よしだ・のりふみ)

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2005年よりフリー。主に、経営、経済分野で取材・執筆・編集を続ける。雑誌では『人事マネジメント』(ビジネスパブリッシング社)や『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)、インターネットではNBオンライン(日経BP社)やダイヤモンドオンライン(ダイヤモンド社)で執筆中。このほか日本マンパワーや専門学校で文章指導の講師を務める。

著書に『非正社員から正社員になる!』(光文社)、『年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文舘出版)、『あの日、「負け組社員」になった…他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)、『いますぐ「さすが」と言いなさい!』(ビジネス社)など。ブログ「吉田典史の編集部」、Twitterアカウント:@katigumi


 ここ2カ月間、私は納得ができないものがある。それは、この国を支配する空気だ。

 東日本大震災が発生して以降、多くのメディアが被災地で途方に暮れる人や泣き崩れる人を大量に報じた。前回、この時事日想で紹介した町長や町役場の職員のように「美談」として取り上げられた人もいる(関連記事)。このような報道の結果、「亡くなった人や被災者がかわいそう」という空気が日本を支配した。

 あえて議論するまでもなく、亡くなった人や被災者は気の毒である。しかし、「かわいそう」なのはこの人たちだけなのだろうか。

犯罪被害者と児童相談所

 世の中には、苦しんでいる人は少なくない。例えば、時事日想で取材した「犯罪被害者の会」の会員たちである。会には家族が犯罪に巻き込まれ、殺された人が参加している。何の落ち度もないのに突然、夫や妻、親や息子、娘を殺されたのだ。この中には、精神的なショックのあまり長きにわたり心の病になっている人がいる。働くことさえできなくなっている人もいる。

 2010年9月の取材時に事務局の人に聞いた限りでは、国会議員や経営者などで犯罪被害者を積極的に支援する人は少ないという。芸能人が励ますために事務所を訪れることはなく、学生や会社員がボランティアとして支援することもほとんどないという。

 ところが、国会議員や経営者、芸能人、ボランティアは東北の被災地には行く。そして、それを自身のWebサイトやブログでわざわざ紹介する。私の知人が勤務する雑誌の編集部には、「今度、うちの〇〇が被災地の〇〇に行きます」と宣伝までしてくる芸能プロダクションもあったという。ここに、私が理解できないものがある。苦しんでいる人を助けるならば、被災者以外の恵まれない人にも手を差し伸べるべきではないだろうか。

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