従来、国際会議における日本代表団は、諸外国とのコミュニケーションに消極的で日本人同士で集まって日本語でこそこそ話しているイメージが強いのだが、実際はどうなのだろうか?
「いや、必ずしもそうではありませんよ。COP15での経験をお話しすると、各省庁の実務者たちは会議場に到着するなり、それぞれ担当分野のセッションに向けてパッと散っていって、国益を賭けた折衝を英語で行うタフ・ネゴシエーターたちでした。それはもう頼もしいですよ」
近年、留学や海外在住などを通じて語学力を高めた官僚やビジネスパーソンが日本でも増え、必ずしも同時通訳者に頼らなくてもよい状況になりつつあるということか。では、それでもあえて専門の同時通訳者を通して会議を行う背景には何があるのだろうか?
「第1に、次の第2の問題とも関連するのですが、先ほどお話したようなタフ・ネゴシエーターが中央官庁に存在するとはいっても、政治家であれ産業界であれ、あるいは学界であれ、日本全体として見ると、英語など外国語によるコミュニケーション能力に関して、まだ十分とは言えないということが挙げられると思います。
第2に英語がネイティブでない国の人が英語で話す場合、そして時には英語がネイティブな場合であっても国によっては、しばしば独特の強いなまりがあって、かなり英語力のある日本人であっても、十分に理解することができないケースが多く存在します。そういう場合には、やはり専門家としての同時通訳者がいる方が望ましいですね。
第3に会議の最中、発言内容をめぐって問題が発生した場合、同時通訳者が責任を負うことによって、会議の当事者同士にキズが付かずに済み、国際関係にヒビが入るのを防げるという利点があると思います」
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