2010年には尖閣諸島をめぐる問題などで、対立を深めた日本と中国。しかし、国のトップレベルで対立していても、その底流では変化が生まれつつある。その主役となっているのが、中国で“80後(1980年代生まれ)”や“90後(1990年代生まれ)”と呼ばれている若者たちだ。彼らは改革開放政策後の安定した成長経済のもとで育ち、一人っ子政策が本格化した後の世代。ネットも使いこなすなど、それまでの世代と感性が異なっているとされる。
そして、80後・90後の若者たちは、日本に対して持っている印象もそれまでの世代と異なっている。1月に出版された『オタ中国人の憂鬱 怒れる中国人を脱力させる日本の萌え力』(百元籠羊著)では、中国の若者がアニメ『新世紀エヴァンゲリオン』『涼宮ハルヒの憂鬱』などにのめり込んだり、温家宝首相が「孫が『ウルトラマン』ばかり見ている」と嘆いたりしていることを紹介している。
そんな80後世代の1人が、青春小説作家(日本で言うライトノベル作家)の落落(ルオルオ)氏である。1982年生まれの彼女の著作は高校生など若い世代を中心に支持を得ており(各著作の販売数は20〜30万部)、その中には日本を舞台とした作品もある。
3月16〜18日の早稲田大学のシンポジウムや講演会で、日本好きの中国若手作家として講演する予定だった落落氏。しかし、地震の影響などで、シンポジウムは1日に短縮、講演会も中止となってしまった。そこで、代わりにインタビューをお願いし、日本への思いを聞いてみた。
――どのようにして青春小説作家になったのでしょうか。
落落 18歳くらいの時に北京で、日本のマンガやアニメを紹介する雑誌の編集部で働き始めました。新しいアニメを見て、その内容やどこがおススメかということを書いていました。
北京で評論を書いているうちに、結構有名になりました。それで、今の出版社のボスの郭敬明※さんが「非常にいい」と評価してくれて、「私の雑誌で評論ではなくて、文学的なものを書いてみないか」と誘ってくれたことから、小説を書き始めました。マンガやアニメの評論といっても、客観的に書くのではなく、叙情的、小説的な感じで書いていたので、郭敬明さんの目にとまったんでしょうね。
落落 それで2005年に『年華是无效信』(販売数30万部)という長編小説を出版しました。高校生の女の子2人の友情を描いた物語で、お互い反発しながらも、本心では思い合っているという青春小説です。
『年華是无效信』は私自身の経験に基づいた小説です。郭敬明さんから「小説を書いてみないか」と誘われた時、自分と親友の友情関係のことなら、自分の心理状態をうまく描けると思ったのです。そのころ、時々とてもいい友達であるものの、時々我慢できなくなるという、不安定な関係の友達がいたので、心の機微が描けると思って書いたのです。
ほかの小説もすべてが自分の体験をもとにしているわけではないのですが、2011年1月に出版した最新作『剩者為王』は自分や友達の体験をもとにして、(30歳未婚エリート女性の)勝ち組、負け組のような関係を書きました。日本でもそういう関係はあると思うのですが、中国でも同じことを思う人が増えてきたので、共感してもらえるのではないかと思って書いたのです。私も年齢を重ねてきたので、(今までの学園モノとは)違うものを書いてみたいと思い、そういう方向に進んでみました。
ただ、25万部売れているのですが、今までの作品と同様、読者は中学生や高校生が中心です。私としては、自分と同じ年代や、もう少し上の年代の人に売れてほしいと思っているのですが。
――なぜ読者の中心が中学生や高校生になるのですか?
落落 『最小説』という雑誌で連載していたのですが、『最小説』の読者は学生が中心なので、連載をまとめた小説を買う人もどうしても若い人になってしまうのです。
――もっと上の世代が読む雑誌で連載したらいいのでは?
落落 『最小説』は何十万部と売れている雑誌で、上の年代の人が読む雑誌だと発行部数がそれより落ちてしまうのです。そのため、ビジネス的なことを考えると、『最小説』に連載した方がいいのかなあと思っているのです。
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