なぜ中途採用者はリストラされやすいのか吉田典史の時事日想(1/3 ページ)

» 2011年03月11日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

著者プロフィール:吉田典史(よしだ・のりふみ)

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2005年よりフリー。主に、経営、経済分野で取材・執筆・編集を続ける。雑誌では『人事マネジメント』(ビジネスパブリッシング社)や『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)、インターネットではNBオンライン(日経BP社)やダイヤモンドオンライン(ダイヤモンド社)で執筆中。このほか日本マンパワーや専門学校で文章指導の講師を務める。

著書に『非正社員から正社員になる!』(光文社)、『年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文舘出版)、『あの日、「負け組社員」になった…他人事ではない"会社の落とし穴"の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)、『いますぐ「さすが」と言いなさい!』(ビジネス社)など。ブログ「吉田典史の編集部」、Twitterアカウント:@katigumi


 2010年11月から2011年2月まで、私はいくつかの労働組合を取材した。外部組合の「東京管理職ユニオン」、名古屋に本部を構える「連帯ユニオン」、「女性ユニオン名古屋」などである。それらの役員たちに、リストラにぶつかりそのまま苦しんでいる組合員を紹介してほしいと依頼した。

 紹介を受けたのは、20人ほどだった。いずれも正社員である。年齢は30代前半から50代後半までで、すべて男性だった。勤務する会社は、社員数5000人規模の大企業もあれば30人以下の零細企業もあった。業界は警備、学習塾、通信教育、飲食、小売、食品、出版、印刷、広告、医療機器販売、文具販売など多岐にわたる。

 ここで、私は意外な事実を知った。彼らの9割以上が中途採用試験を経て現在の会社に入社していたのだ。しかも、ほとんどがわずか3年以内にリストラになっている。

 私は疑問に感じた。そこで再度、東京管理職ユニオン執行委員長の設楽清嗣さんのもとを訪ね、「なぜ、中途採用者はリストラに遭いやすいのか」と伺った。設楽さんは、外部組合のパイオニア的な存在といわれる東京管理職ユニオンを20年前に旗揚げした。その後、多くの会社と団体交渉や裁判などを行ってきたことで知られる。

 まず日本企業がこの20年間ほどで3度の大きなリストラを経験したことを挙げた。それは、時期で言えば、次のものである。

1.1990年代前半のバブル経済崩壊直後

2.1990年代後半の金融危機のころ

3.2008年秋以降のリーマン・ショック以降

 そして、これらの流れの中で雇用流動化が進み、労使双方に誤解が生じたと語る。

 「会社員は今の職場でうまくいかない場合は、『よその会社に行けば何とかなる』と思い込む傾向がある。一方で、会社は中途採用試験を受ける人を安易に採用している。例えば、『この人は大企業に勤務していたから優秀であり、即戦力に違いない』と受け止める。双方が甘い考えなのだ。だから、数年以内に関係が破たんする」

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