マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など。他の連載は印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」、メルマガ「ビジスパ」で「ことばのデザイナーのマーケティングレシピ」。中小企業診断士。アンサー・コンサルティングLLPパートナー。ブログ「マーケティング・ブレイン」(コンサル業)、「cotoba」(執筆業)。Twitterアカウントは@Yoshifumi_Go。
「これは“ケンメリ”。アラカン(還暦前後)なら『オレ乗ったよなあ、良いクルマだったよな』と言うでしょうし、アラフィフ(50歳前後)なら『知ってる』。でも、アラカンの息子や娘たち、アラサー(30歳前後)にとっては、ケンメリなんて太平洋戦争くらいの感覚でしょう」
『クルマでわかる!日本の現代史』の共著者の1人、志村昌彦さんは帯を指しながら話す。
「1971年ごろ、平山みき※が『真夏の出来事』でクルマに乗って夏の海をデートしたと歌うんですが、歌謡曲でドライブデートが歌われた最初のヒット曲です」
ユーミン※の『中央フリーウェイ』は何年でした?
「1976年なので、ちょっと後なんですね。1972年に『ケンとメリーのスカイライン』(日産の広告キャンペーン)がCMソングとともに大ヒット。1973年にはセリカリフトバックが登場して、華やかなスペシャルティカー時代が到来しました。みんなパンタロン※のジーンズを履いてました」
みんなと言うのも大げさかと。
「いえいえ郷さん、1970年前後の紅白歌合戦を観ると、紅組の3人に1人がパンタロンを履いているんですよ」
へえ!
「1968年、子どもが好きなご飯の第1位にハンバーグライスが登場するんです。NHKの『きょうの料理』がステーキを取り上げると、視聴者から『庶民が食べられないようなものを取り上げるなんてけしからん』とお叱りの電話が来たので、村上信夫シェフに作ってもらった。それがヒットして、トップの座がそれまでの卵焼きからハンバーグに移ったんです。巨人・大鵬・卵焼きの時代の終わりとも言えます」
……1968年のページを開くと、スラントノーズ※が個性的なコロナ・マークIIの発売、アニメ『巨人の星』の開始、ボンカレーの発売、そして紅白歌合戦での3分の1がパンタロンの話が載っている。クルマの本のお話を聞きに来たはずなのに、のっけから脱線しまくり。
「それでいいんです。この本は“語る本”なんです。時折ページを閉じて、語るために読んでもらいたいですね」と志村さん。
『クルマでわかる!日本の現代史』は1945年の終戦の年から2010年までのクルマの歴史を、1年ごとに丹念にたどりながら、その年の出来事や流行も一望できる便利な年代記となっている。クルマが文化を作り、文化がクルマを追いかけた時代が生き生きと網羅されている。
アラサーの読者のためにいくつか脚注を付けておいた。ちなみに、脚注付き小説といえば、田中康夫著『なんとなくクリスタル』は1980年登場、意外に新しいのだ(「〜なのだ」の元祖『天才バカボン』は1967年から。念のため)。
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