なぜ30〜40代は、“自分を言いくるめる”のか吉田典史の時事日想(2/4 ページ)

» 2011年01月28日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

論理と行動が矛盾

 このように自分を言いくるめる人は、私の周りの30〜40代で増えている。少なくとも、10〜20代の人からは聞いたことがない。例えば、昨年夏に取材で会った大手情報通信会社に勤める30代後半の男性はこう言った。「独立しようと思えば、自分はできる。1人になれば、年収3000万円くらいを稼げる。だが、家のローンや子どもの養育費を考えると、独立しない」――。

 私が専門学校で教える受講生の中にも、こういう女性がいた。30代前半の専業主婦であるが、20代後半まで会社員をしていた。彼女は「私は会社員をしない。作家になる」と言う。しかし、それが無理と分かると、今度は「作家のような不安定な職業には就きたくなかった」と口にする。

 この人たちは、論理と行動が矛盾している。なぜ、こういった人たちが30代以降になると増えるのか。そこでキャリアコンサルタントとして大手企業の人材開発を支援している門田由貴子さん(株式会社エトス代表)に話を聞いた。

 門田さんのもとにも、自らを言いくるめるタイプの人がキャリアカウンセリングで相談に訪れるケースがあるという。

 「誰でも30代半ばにさしかかると、自分の力量や限界が見えてきます。だから、地に足が着いた現実的な生活を受け入れていきます。男性なら独立や起業をあきらめて、会社員として安定した収入を得ることを優先したり、女性は育児や親の介護などの負担を考えて、夢を追求するエネルギーを失っていったりします。

 しかし、自分を言いくるめるタイプの人は、 “野心的”な人です。自分に自信があるので、実力よりもはるかに高いレベルの夢や目標を持つ傾向があります。プライドも高いのです。この人たちは、考え方がやや現実離れしているともいえます。得てして身の丈を知らず、自分を過大評価する人が多いですね。だから『自分には独立をするだけの力がない』とは言えず、『家庭があるから、独立ができない』という言い訳めいた論理になるのでしょう」

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