「オレは変わった」という、“お山の大将”にダマされてはいけない吉田典史の時事日想(1/3 ページ)

» 2011年01月14日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

著者プロフィール:吉田典史(よしだ・のりふみ)

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2005年よりフリー。主に、経営、経済分野で取材・執筆・編集を続ける。雑誌では『人事マネジメント』(ビジネスパブリッシング社)や『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)、インターネットではNBオンライン(日経BP社)やダイヤモンドオンライン(ダイヤモンド社)で執筆中。このほか日本マンパワーや専門学校で文章指導の講師を務める。

著書に『非正社員から正社員になる!』(光文社)、『年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文舘出版)、『あの日、「負け組社員」になった…他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)、『いますぐ「さすが」と言いなさい!』(ビジネス社)など。ブログ「吉田典史の編集部」、Twitterアカウント:@katigumi


 年末に、ベストセラー『日本でいちばん大切にしたい会社2』(あさ出版)を読んだ。この本には、独自の経営理念を持った会社がいくつか紹介されている。これらの会社は、社員やその家族、顧客はもちろん、取引先や下請けまでも大切にしていく考えで経営が成り立っている。

 その中に「沖縄教育出版」という出版社(本社:那覇市)があった。この創業経営者のエピソードを読んだとき、多くのベンチャー企業がぶつかる「10億円の壁」を思い起こした。

 本によると、沖縄教育出版は現在、正社員が47人、パートは101人。ここ5〜6年間の売り上げは14〜18億円で推移し、経常利益は3〜4億円。売上高経常利益率は20〜30%となり、業績は好調である。

 創業者である川畑保夫社長は、1948年生まれ。29歳のときに個人事業主からスタートし、その後、法人化。社員にげきを飛ばしつつ、身を粉にして働き続けたという。しかし業績は伸びず、社員も次々と辞めていった。

 焦る心を押さえるかのように、ある年の年末に忘年会を開き、社員に参加を促した。だが、会場に来たのは30人の社員のうち、わずか15人。このときに、自らの経営のあり方に気づくものがあったようだ。

 その後、「真の気づき」を得ることになる。過労とストレスが原因で、腎臓がんになった。国立がんセンターに入院し、左腎を摘出する出術を受けた。入院は、3カ月に及んだ。川畑社長によると、その間に、生まれ変わったのだという。

 闘病生活の中で、経済優先、成長優先、企業優先、自社・自分優先といったこれまでの生き方や考え方を根本的に見直し、生きる意味や健康、食べ物の大切さを痛感したそうだ。

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