ドイツ・カールスルーエ市在住ジャーナリスト。東京都立大学工学研究科大学院修了後、1995年渡独。ドイツ及び欧州の環境活動やまちづくりをテーマに、執筆、講演、研究調査、視察コーディネートを行う。記事連載「EUレポート(日本経済研究所/月報)」、「環境・エネルギー先端レポート(ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社/月次ニュースレター)」、著書に「環境先進国ドイツの今」、「ドイツ・人が主役のまちづくり」など。ドイツ・ジャーナリスト協会(DJV)会員。公式サイト:「ドイツ環境情報のページ」
先日、市民協会「ドイツ納税者連盟」から、2009年度の税金無駄遣い調査リスト「ブラックブック」が発表された。こういった指摘がなければ当事者自ら無駄遣いを公表することがないのは、日本に限らずドイツとて同じこと。今回の時事日想はドイツにおける税金無駄遣いの具体例を見ながら、市民協会によるチェック体制をレポートしたい。
無駄遣い127例の筆頭はドイツ鉄道の線路工事にまつわるものだ。
超特急ICEのケルン‐フランクフルト間
長さ20キロメートルに渡り防音・防風壁を設けたが、ICEの起こす衝撃波による壁破損の可能性が判明。この設計ミスが原因で、壁を取り壊し、再建設しなければならなかった。これにより納税者は4510万ユーロ(51億円)を余計に負担。
ドイツ鉄道は株式会社化され形式上民営化されているが、株式はすべて連邦が所有している。従ってこの件は連邦レベルでの税の無駄遣いということになる。
次の例も連邦レベルでの無駄遣い。
超高価な職業訓練
連邦が約400万ユーロ(4億5000万円)を投じ、インターネットによる職業訓練希望者と受け入れ側を結びつける紹介システムを運営。しかしこのシステムを通して実現した職業訓練は1年間でわずか18組のみ。縁結びにかかった費用が1件22万ユーロ(2500万円)という超豪華な職業訓練となった。
38回目の発行となるブラックブックが指摘する税金無駄遣いは連邦(国)だけではなく、州、自治体レベルも含まれ、全国の協会員から寄せられた情報を基に協会が独自調査したものだ。寄せられた無駄遣いの指摘は127を遥かに超えているが、その中から厳選され全国規模で公表することに意味があるものがブラックブックに掲載されている。
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