デジタルサイネージが変えるコンビニの未来像ローソンを“研究する”(1/2 ページ)

» 2010年11月05日 08時00分 公開
[藤村能光,Business Media 誠]

 ローソンは2010年、全国の店舗にデジタルサイネージ端末を設置し、コンテンツや広告を放映する「東京メディア」を開始した。仕掛けたのはクロスオーシャンメディア。ローソン、アサツーディ・ケイ、NTTドコモの合弁会社で、デジタルサイネージの新事業を手掛けている。東京メディアはコンビニエンスストア(コンビニ)のビジネスモデル、そして消費者の生活をどう変えるのだろうか。

ローソン 新橋日比谷通店の東京メディア ローソン 新橋日比谷通店の東京メディア

来店者を増やすための接点作り

image 2008年5月、ローソンのサービス本部戦略統括部に所属していた市原氏。店舗の入店者増加を目指し、ローソンカードを起点とした会員施策、Loppiなどの有効活用を考える立場だった

 「ローソンの店舗に入ってもらうきっかけを作りたい」

 クロスオーシャンメディアの市原義文社長は、東京メディアを来店者、リピーターの増加につなげたいと話す。消費者の日々の生活――通勤、仕事、休憩、帰宅などにおける動線が複雑になり、画一的な広告やプロモーション、販売促進だけでは、ローソン店舗に消費者を引き込むことが難しくなっているからだ。

 ローソンは700万人規模の会員データベースを持っているが「その多くはインターネットやモバイルを使って店舗に来てくれる“ローソンマニア”。彼らを分析しても、来店者を増やす施策は導き出せない」(市原氏)。

 そこで市原氏は、消費者との新たな接点を作り出せるデジタルサイネージに注目。それを具現化したのが東京メディアである。全国に店舗を持つローソンの地の利を生かし、首都圏を中心とした310店舗(10月上旬)に端末を設置。約3割が2面ディスプレイを採用しており、総ディスプレイ数は401面だ。この集合体が東京メディアであり、ここにクロスオーシャンメディアが作成したコンテンツや広告を配信していく。

同質化するコンビニ戦略に一石を投じる

 市原氏はコンビニ業界のビジネスモデルについて「競合の施策がすぐに同質化し、結果として自社の店舗も選ばれなくなっている」と指摘する。小売業界では「1990年代後半から」デジタルサイネージ活用が進んでおり、イオンやマツモトキヨシ、ファミリーマートを筆頭に、多くの戦略がひしめきあっている。その主な狙いは、売れ筋の商品をデジタルサイネージでリアルタイムに紹介することで、利益を積み上げる販売促進だ。

 だが東京メディアの狙いは異なる。過去事例の研究から「販売促進の色が強すぎると、コストや投入する人員と折り合いが付かず、デジタルサイネージビジネスが破綻してしまう」ことが見えてきた。利益重視のデジタルサイネージがうまくいかないと判断した市原氏は、別の発想を持ち出す。東京メディアの目指す姿を「地域メディア」と設定したのだ。

 それは総合スーパーマーケットやショッピングストアとコンビニの違いを見れば明らかになる。決定的な違いは店舗数だ。全国に店舗を持つというスケールメリットを生かし、東京メディアでコンテンツを放映できれば、地域という「面」で東京メディアの認知度を上げられる。一方、販売促進を目指したデジタルサイネージはその店舗に来る顧客という「点」でしか、コンテンツを訴求できない。

 消費者が店舗に足を運ぶようになるためには、東京メディアを地域メディアにする必要がある――。デジタルサイネージに対するローソンのアプローチは、「販売促進一辺倒」といえる他業者の戦略と一線を画すものである。

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