夏季休暇を取れない人は能力が低いのか吉田典史の時事日想(1/3 ページ)

» 2010年08月20日 08時20分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

著者プロフィール:吉田典史(よしだ・のりふみ)

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2005年よりフリー。主に、経営、経済分野で取材・執筆・編集を続ける。雑誌では『人事マネジメント』(ビジネスパブリッシング社)や『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)、インターネットではNBオンライン(日経BP社)やダイヤモンドオンライン(ダイヤモンド社)で執筆中。このほか日本マンパワーや専門学校で文章指導の講師を務める。

著書に『非正社員から正社員になる!』(光文社)、『年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文舘出版)、『あの日、「負け組社員」になった…他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)、『いますぐ「さすが」と言いなさい!』(ビジネス社)など。ブログ「吉田典史の編集部」、Twitterアカウント:@katigumi


 ここ数週間で、大企業10社前後を取材した。そのうちの半数が、8月の数日を「一斉休暇」としていた。基本的には、その期間はすべての社員が休みになる。だが、広報担当者によると、夏季休暇を取ることができない社員がいるという。

 その理由を聞くと、担当者は「部署の仕事が多く、仕方がない」と答える。その回答が事実ならば、部署の人がすべて出社するべきだろう。ところが、実際に出社するのは「ごく一部」だという。

 担当者にさらに聞くと、「ごく一部」になる人は、少なくとも次の4つのグループに分けられると思った。

A:上司からのイジメなどを受けている

B:「柔軟な職務構造」の中での仕事の進め方を心得ていない

C:優秀であるがゆえに、仕事を押し付けられる

D:「落ちこぼれ」と自分で思い込み、「自己責任」のわなにはまっている

 まずAであるが、上司からイジメの一環としてほかの社員よりも仕事をたくさん与えられている人を指す。当然、それを消化することができずに、休みが取れない。これは、20代後半から30代前半のころの私である。

 いま、私の取引先の新聞社や出版社にもこういう社員がいる。その中には、イジメを受けているという現実から逃げるために、「上司から鍛えられている」と思い込もうとする人がいる。それは甘い考えであり、上司の思う壺だろう。おそらく、イジメはエスカレートするに違いない。

 日本の企業では、上司が「仕事の裁量権」を持っている。誰にどのような仕事をどのくらいあてがうかを決める権限である。米国の企業ならば、入社する際に職務記述書にサインをする。これが重要な意味を持つ。以前、取材した米国企業の職務記述書は80ページ前後に及ぶものだった。常識的には、社員はそこに書かれてある仕事や分量を任される。上司もそれを無視して、部下を動かすことはできない。

 日本では、上司と部下の“あうんの呼吸”で担当する仕事や分量が決まる。若い人の中には、こう言う人がいる。「大企業の上司は訓練されている。アンフェアなことはしない」。だが、私が取材したところ、大企業の上司の方がこういう姑息なことを行う。上司との関係が悪いと、つまらない仕事やできないような仕事を与えられることはある。そして、休みを取れない状況に追い込まれることもありうる。

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