生き残るのが難しい……ゴーストライターの世界吉田典史の時事日想(1/4 ページ)

» 2010年07月02日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

著者プロフィール:吉田典史(よしだ・のりふみ)

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2005年よりフリー。主に、経営、経済分野で取材・執筆・編集を続ける。雑誌では『人事マネジメント』(ビジネスパブリッシング社)や『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)、インターネットではNBオンライン(日経BP社)やダイヤモンドオンライン(ダイヤモンド社)で執筆中。このほか日本マンパワーや専門学校で文章指導の講師を務める。

著書に『非正社員から正社員になる!』(光文社)、『年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文舘出版)、『あの日、「負け組社員」になった…他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)、『いますぐ「さすが」と言いなさい!』(ビジネス社)など。ブログ「吉田典史の編集部」、Twitterアカウント:@katigumi


 ゴーストライターの仕事は、トラブルが絶えないもの。そこで今回の時事日想は、私なりの解決策を紹介する。結論から言えば、少なくとも次のようなことを踏まえる必要がある。

(1)「著者の暴走」を防ぎ、共存共栄体制を作る

(2)編集者、著者にゴーストライターの仕事を理解させる

(3)ゴーストライターをする以前に、足元を見つめ直す

 (1)であるが、著者(経営者、コンサルタント、政治家、タレントなど)の身勝手な姿勢をあらためるように仕掛けることが必要だ。著者の中にはトラブルメーカーが少なくなく、取材した中には部下をいじめ抜き、「退職強要」として訴えられた中小企業の経営者もいた。役員との間でお金でもめて裁判になり、負けたベンチャー企業の経営者もいる。クライアント先の企業から訴えられ、賠償金を支払ったコンサルタントもいた。

 これらの人は、法律やルールを守るといったことが苦手だ。私が経験した例を挙げよう。1年ほど前、創業間がないコンサルティング会社の経営者(30代男性)から依頼を受けた。「A出版社から本を出したい。構成案を書いてほしい。その代価として10万円を払う」と。

 そこで構成案を送ってみたものの、返事がなかった。そして1カ月後に、このような連絡がきた。「経営が苦しくなったので、本を出すことを取り止めたい」――。ただ働きになったが、「仕方がない」と自分に言い聞かせた。

 だが、経営者はB出版社に構成案を持ち込み、ゴーストライターを使い、書かせていたのだ。タレコミをしてくれたB出版社の編集者によると、原稿は私の構成案どおりになっているらしい。弁護士に相談したところ、経営者の行為は「詐欺に近い」という。その本は近く発売されるが、もちろん構成案を書いた私やA出版社に、お金は1円も入らない。

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