W杯決勝トーナメント、先制点を入れたチームの勝率を調べてみた誠 Weekly Access Top10(2010年6月19日〜6月25日)

» 2010年06月29日 11時05分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

 先週最も読まれた記事は「もう限界かもしれない……“ブラック企業リスト”の実態」。2位は「給与明細を他人にぶっちゃけたら……その先どうなる?」、3位は「ここでは働きたくないなあ……と大学生が思う業界」だった。

先制点を入れたチームが勝つ確率は74.1%

 南アフリカで行われているサッカーW杯。グループリーグで2勝1敗の好成績をあげた日本代表はグループ2位で決勝トーナメントに進出、1回戦でパラグアイと試合をすることとなった。大会前には不振が続いていた日本代表だったが、本番で意外(?)な活躍を見せているため、2009年12月に岡田武史監督が早稲田大学で行った講演の記事が誠のランキングでも急上昇している。記事についたはてなブックマークのコメントを見ていると、当時と現在とで随分、温度差があって面白い。パラグアイ戦の結果で、これがさらにどのように変化するのか興味深いところだ。

 にわかサッカーファンの筆者も眠い目をこすりつつ、連日連夜、各国代表の試合を見ているのだが、そんな中、気になっているのが解説者がお決まりのように言う言葉。例えば、「先制点がカギになりますね」というセリフを何度となく耳にした視聴者は少なくないだろう。

 「ワールドカップのデータベース」のW杯大会別ゴール数を見ると、ここ数大会の1試合平均得点は2点台。点が多く入るバスケットボールなどとは違い、1点の比重がかなり大きいので、冷静に考えると先制点をあげたチームが有利になるのは当たり前の話だ。

 ここで本当にコメントすべきなのは「先制点が大事」ではなく、「先制点はどのくらい大事なのか」ということではないかと筆者は思ったので、どれくらい重要なのか実際に調べてみることにした。グループリーグでは引き分け狙いの試合もありうるので、W杯決勝トーナメントの試合が調査対象だ。

先制点を入れたチームが勝つ確率は74.1%

 W杯決勝トーナメント(+3位決定戦)の試合数は、1930年ウルグアイ大会から2006年ドイツ大会までで計182試合。先制点を入れたチームの勝敗を見ると、勝ち129(PK戦勝ち8含む)、負け41(PK戦負け4含む)、引き分け再試合4、無得点試合8。つまり、先制点を入れたチームの勝率は74.1%ということになる。1998年フランス大会と2002年日韓大会ではゴールデンゴール方式が導入されており、延長戦での先制点イコール勝利となったので、多少割り引いて考える必要はあるのだが、先制点さえ決めれば4回に3回は勝てると考えればいいだろう。

 16チームが決勝トーナメントに進出する現行方式になった1986年メキシコ大会以降で見ると、先制点を入れた側の勝率は80.7%とさらに高くなる。これは、1試合平均得点が昔より少なくなっていることが影響しているようだ。

1986年以降のW杯決勝トーナメントで2点差以上を逆転したチームはゼロ

 「先制点が大事です」と並んでよく言われるセリフが、「サッカーは2点差が一番危ないんですよ」というもの。今大会でも何度も聞いた。

 これも調べてみると、決勝トーナメントの182試合中、一時的にでも2点差が付いた試合は97試合。そして、2点差を付けた側の最終的な勝敗※を見ると、勝ち90、負け7(PK負け1含む)。つまり、2点差を逆転する確率はわずか7.2%ということになる。

※1938年フランス大会3位決定戦ではスウェーデンが2点を入れてから、ブラジルが4点をとって、逆に2点差を付けたが、この場合は先に2点差を付けたスウェーデンの勝敗を見ている。

 先制点の場合と同じように1986年以降で見ると、一時的にでも2点差がついた試合は38試合あるが、すべて2点差を付けた側が勝っている。つまり過去データから考えると、決勝トーナメントで2点差がついたら、その試合は決まりと言っていいことになる。W杯決勝トーナメントにまで進むチームのレベルでは、2点差で油断することはないようだ。

 2点より大きな得点差からの逆転を探してみると、3点差からの逆転は1954年スイス大会準々決勝のオーストリアVS.スイス(7対4でオーストリア勝利)と1966年イングランド大会準々決勝のポルトガルVS.北朝鮮(5対3でポルトガル勝利)のわずか2試合のみ。4点差以上からの逆転は存在しない。

 ちなみに今大会の決勝トーナメントでは、先制点をあげたチームが今のところすべて勝っているため、逆転劇は発生していない。今夜行われる日本VS.パラグアイ戦では、ぜひとも日本代表に先制点をとってほしいものである。

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