はてなダイアリーの片隅でさまざまな話題をちょっと違った視点から扱う匿名ブロガー“ちきりん”さん。政治や経済から、社会、芸能まで鋭い分析眼で読み解く“ちきりんワールド”をご堪能ください。
※本記事は、「Chikirinの日記」において、2008年4月6日に掲載されたエントリーを再構成したコラムです。
日本の組織や人の特徴の1つに、“EXITできない”ということがあります。
例えば、後継ぎがいない零細企業の経営者でも、「会社を誰かに売る」などとは考えもしない人がたくさんいます。そして文字通り“倒れるまで”自分で経営します。会社単位ではなく、事業単位でもそうです。旧カネボウも会社が崩壊するその時まで、粉飾決算までして紡績事業を持ち続けていました。まるで「企業全体が倒産する方が、特定の事業から撤退するよりマシである」とでも考えていたかのようです。戦争の時の判断もそうだったのかもしれません。国が滅びそうにならないと降伏しないのです。
西欧の企業はまったく考え方が違います。例えば、英国の「Boots」という雑貨・ドラッグストアが10年くらい前に日本に進出してきましたが、あまり流行らなくて、2年ほど後に撤退しました。カルフールも3年くらいで撤退の方向を決めています(実際の売却までは5年)。米系の金融機関では赤字が数年続くと「部門ごとクローズする」というのはよくある話です。
日本企業と欧米企業では、この“引き際のタイミング”が大きく違う、といつも思います。
「撤退をとにかく避ける」という傾向は個人もまったく同じです。例えば、夫婦関係において、「だめだ……」と思ったら躊躇(ちゅうちょ)せず離婚する欧米と、「まずは修復しよう」として、それでだめでも「本当に我慢できないか、もう少し様子をみてみよう」とか言い、加えて「何年間か冷却期間を置いて」離婚する日本、というような違いです。
仕事選びでも同じですね。「この仕事じゃないよ、オレの人生の時間を投資すべきは」と思えば、入社1年目でもすぐに転職する欧米に対して、「まずは、石の上にも3年」の日本。
ちきりんは、この理由のために「日本人には投資が向いていないのでは?」と思います。ちきりんの周りで投資している人の多くが、「いつ売ればいいのか」を知りません。「買う決断」はできても「売る決断」ができないので、損を引きずったままひたすらに待つ人が多いです。一方、株式などとは違い、預貯金ならずっと持っていてもいいので、預貯金や保険が(投資より)日本人には人気があるのかもしれません。
とにかく「引き際のタイミングが非常に遅い」のが日本の公私にわたる特徴です。
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