どっちが優秀なの? 人事異動が多い人と少ない人吉田典史の時事日想(1/3 ページ)

» 2010年03月26日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

著者プロフィール:吉田典史(よしだ・のりふみ)

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2005年よりフリー。主に、経営、経済分野で取材・執筆・編集を続ける。雑誌では『人事マネジメント』(ビジネスパブリッシング社)や『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)、インターネットではNBオンライン(日経BP社)やダイヤモンドオンライン(ダイヤモンド社)で執筆中。このほか日本マンパワーや専門学校で文章指導の講師を務める。

著書に『非正社員から正社員になる!』(光文社)、『年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文舘出版)、『あの日、「負け組社員」になった…他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)など。ブログ「吉田典史の編集部」


 前回の時事日想は、人事異動のカラクリについて解説した(関連記事)。今回は「異動の数」について触れてみたい。異動の時期になると「異動の回数が多い人は優秀で、少ない人はダメな人」などと噂されることがある。こうした風評が事実であるのかどうか、今回はそれに迫ってみたい。そこで、2人のベテランの人事コンサルタントに話を聞いてみた。

 人事コンサルティングなどを手掛けている株式会社トランストラクチャ代表の林明文さんは「会社により、異動の意味は当然、違ってくる」と前置きする。そのうえで、中堅・大企業などビジネスモデルが確立している会社での異動は「会社として社員に新たな能力を開発する場を与えるもの」と位置付ける。そして「異動の多い人はその中身や異動の期間にもよるが、昇進していく軌道にある程度は乗っていると見ることができる」という。

 私なりに補足すると、異動は会社の規模、歴史、売り上げ、利益、社員数などでかなり違う。その点では、少なくとも2つのグループに分けられる。大ざっぱに言えば、1つは「中堅・大企業」であり、もう1つは「中小・ベンチャー企業」である。

 これは私が感じ取っている分類となるが、「社員数150人以上」「売上50億円以上」「創業10年以上」といった条件を2つ以上満たせば、その会社は中堅企業と言えるのではないかと思う。もちろん、社員数1000人以上は大企業と言っていいだろう。

 中堅・大企業の異動は、定期的(少なくとも年に1回)、全社員を対象に行っているケースが多い。林さんが指摘しているのはこの異動のことである。例えば、営業1部→営業3部→営業企画部などと移り、係長→課長補佐→課長と昇進していくならばその人は「軌道に乗っている」と言える。

 一方で「軌道から外れている」人もいる。特に30代半ば以上の社員の中には、1つの部署にほかの社員よりも長く在籍したり、地方支社をいくつも回っている人がいる。当然、昇進などはない。

 役員や人事部は、この人たちには辞めてもらいたいと思っているだろう。しかし、この時事日想でも述べてきたが、正社員を解雇にすることは法的に難しい(関連記事)。私はこの解雇要件を段階的に緩めるべきだと思うが、現在は正社員を解雇することは勇気のいる試みである。結局、「軌道から外れた人」はその後も会社に残る。

 例えば、新聞社やテレビ局、大きな広告代理店、出版社になると、40〜50代でこういった人たちが一カ所に集められる部署がある。そうしたセクションは「データ推進部」などと、何をしているのかよく分からない名前が付いている。

 私が勤務した職場では、こうした部署は「姥(うば)捨て山」ならぬ、「ジジイ捨て山」と20〜30代の社員たちに言われていた。今後は、40代のバブル世代で「軌道から外れている」社員がこの山に行くことになる。一部では、すでに始まっている。

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