ユーロファミリーに“嘘つき”が出てきた……ユーロ8年目の危機松田雅央の時事日想(1/3 ページ)

» 2010年03月10日 08時00分 公開
[松田雅央Business Media 誠]

著者プロフィール:松田雅央(まつだまさひろ)

ドイツ・カールスルーエ市在住ジャーナリスト。東京都立大学工学研究科大学院修了後、1995年渡独。ドイツ及び欧州の環境活動やまちづくりをテーマに、執筆、講演、研究調査、視察コーディネートを行う。記事連載「EUレポート(日本経済研究所/月報)」、「環境・エネルギー先端レポート(ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社/月次ニュースレター)」、著書に「環境先進国ドイツの今」、「ドイツ・人が主役のまちづくり」など。ドイツ・ジャーナリスト協会(DJV)会員。公式サイト:「ドイツ環境情報のページ


 欧州連合(EU)の加盟国中12カ国が自国の通貨を放棄し、新しい単一通貨「ユーロ」を採用したのが2002年1月1日。2007年1月1日にはスロヴェニア、2008年1月1日にはキプロスとマルタ、そして2009年1月1日にはスロヴァキアも新たにユーロを採用し、ユーロ圏は計16カ国に拡大した。ユーロ圏の人口は計3億3000万に達し、さらにスイスやポーランドなど「ユーロを採用していない周辺諸国」でも部分的にユーロは流通している。国際的にみてもユーロはUSドルに次ぐ第2国際通貨としての地位を確立した。

EU加盟国(青+紫)とユーロ採用国(青)。ただし、この地図ではまだスロベニアが青に塗り分けられていない(出典:欧州連合代表部の公式Webサイト

 しかし、導入から8年を迎えたユーロはマクロ経済的に見ると問題が山積し、先行きは必ずしも楽観できない。その象徴的な出来事が現在ユーロ諸国を揺るがしているギリシャの財政危機だ。

ユーロの誕生

現金自動支払機

 人生において、新しい通貨の誕生に立ち会う機会はそうあるものではない。戦争(敗戦)によって通貨が切り替わる場合や、ユーロのような「発展的切り替え」も含め、とにかく珍しい体験であることは確かだ。

 2002年1月のユーロ切り替えを思い起こしてみた。金融機関や小売店は2001年中にユーロ紙幣・硬貨を手元に置いていたが、ほとんどの市民は1月に入って初めてユーロを手にすることとなった。小売店で旧通貨(ドイツならばマルク)を使うことはできたが釣銭は必ずユーロで支払われ、現金自動支払機の引き出しもユーロに統一された。財布の中から旧通貨が消えるのは思いのほか早く、1週間もすると旧通貨を目にする機会はほとんどなくなったように思う。

 ユーロ紙幣は5、10、20、50、100、200、500ユーロの7種類。この7種類の紙幣にはユーロ圏共通のデザインが用いられ、欧州の歴史における建築様式の発展が、人と人をつなぐ「窓」と「橋」という図柄によって表現されている。これらの図柄は特定のモチーフによるものではなく「欧州のどこかにありそうな風景」である。

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