ジャーナリスト・上杉隆氏とインフォバーンの小林弘人CEOによる、対談連載7回目。「新聞記者の給与は高い。だから高コスト体質だ」といった指摘もあるが、どのようにすれば記事コストを下げることができるのだろうか。この点について、小林氏は「アマチュアからジャーナリストを育てれば、自分たちの商売も楽になるのでは?」と指摘している。
1994年、インターネット文化を伝える雑誌『WIRED』日本版を創刊。1998年、株式会社インフォバーンを設立し、月刊『サイゾー』を創刊した。2006年には全米で著名なブログメディア『ギズモード』の日本版を立ち上げた。
現在、インフォバーンCEO。メディアプロデュースに携わる一方、大学や新聞社などに招かれ、講演やメディアへの寄稿をこなす。著書に『新世紀メディア論 新聞・雑誌が死ぬ前に』(バジリコ)のほか、『フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略』(日本放送出版協会)の監修を務めている。
小林 イラン大統領選報道のとき、Facebookは活躍しました。このときは匿名でなくてはならない理由がありますし、匿名だからといって黙殺されたわけではありません。要は書かれている中身がどうなのかという話です。当時、ポルトガルに住んでいるジャーナリストと仲良くなったのですが、その人もハンドルネームでしたが、僕はその人の情報を信頼しています。
僕は新聞社や雑誌社も匿名に近い形と思っています。最近は実名報道も多くなってきましたが、その記事を企画・担当した編者の名前は出てきません。だから、匿名を批判する業界人はいますが、その前に自分たちも誰がどの記事を担当したのかクレジットと連絡先も書くべきかと。米国のローカルニュースサイトでは公開しているところも少なくありません。
話は変わりますが、僕は新聞社に、このようなことを言っています。「もっとアマチュアからジャーナリストを育てた方が、自分たちの商売も楽になるのでは?」と。自分たちがどれだけプロフェッショナルかということを、読者に教育しないと、なかなか理解されない。例えばブログには記述の2点セットみたいなものがあって、記事が初出じゃない場合、一次情報をどこから得たのかリンクを含めて情報源を開示すること。もう1つは、その記事にバイアスがかかって見られる場合、“利益相反(Conflicts of Interest)”になりそうな情報をディスクローズすること。
こういう記述があるかないかだけでも、ひとつの質の選択基準になります。そうやって分かってもらって、初めて「あの人たちのニュースに、お金を払ってもいいなあ」といった尊敬も勝ち得ることでしょう。また、彼らとうまく連携することで情報の入手コストは低減できると思います。
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