上杉 メディア業界は古い体質が残っているので、その中で新しいことをしようとする人は、壁にぶち当たるでしょうね。やがて嫌気がさし、「何か新しいことをしよう」というモチベーションが低下する。
小林 同じ敷地内で土を掘りあっていては、いずれ資源も枯渇するでしょうしね。やはり新しい世界に足を突っ込み、なんとかサバイバルするためにも、革新が必要です。
上杉 私は1999年にニューヨーク・タイムズに入り、それ以来記者クラブ問題を取り上げてきました。当時と今、言っていることは全く同じです。ただ2008年に『ジャーナリズム崩壊』(幻冬舎新書)を出したとき、主要メディアの人たちからはこのようなことを言われました。「こんなこと、昔からいろんな人が言ってるよ。いまさら古い問題を取り上げて、どうするの?」と。
確かに記者クラブ問題は、30年ほど前から取り上げられています。しかしこの30年間、何か変わったことはあるのでしょうか。いまでも私の批判が通用するということは、逆に言うと「何も変わっていない」ということ。
小林 むしろ「記者クラブは必要なんだ」といった声を聞きますよね。しかしこうした意見は、“詭弁”にしか聞こえないなぁ。
上杉 その通り、詭弁ですね。
小林 何度も同じことを聞かされているのですが、やはり説得力はゼロ(笑)。
上杉 海外メディアからは日本の記者クラブについて、「ちょっと理解に苦しむ、少しばかりとち狂った集団」といった感じで見られています。また「彼らは本当にエリートなのか? 言っている意味が分からない」などとバカにもされています。
昨年末、英国のインディペンデント紙や台湾の中国時報など、実に多くの取材を受けましたが、私がいくらこの問題を説明しても外国人には完全には理解できないようです。しまいには、彼らは怒り始めます。私に怒っても仕方がないのに(笑)。
また、同じころに開かれた海外メディア向けのシンポジウムの席で、記者クラブについて話をしました。すると外国人記者たちからは「まだそんなことをやっているのか!?」と、ビックリされましたね。
小林 江戸幕府が100年以上も続くわけですね(笑)。
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