週刊誌が記者クラブを批判しない理由(2)上杉隆×窪田順生「ここまでしゃべっていいですか」(1/3 ページ)

» 2009年11月20日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 ジャーナリスト・上杉隆氏とノンフィクションライター・窪田順生(くぼた・まさき)氏による、対談連載2回目。週刊誌の記者はほとんどの記者会見に入ることができないが、なぜ彼らは記者クラブのことを批判しないのだろうか? その理由について、2人が語った。

 →なぜこの国に、“モミ消しのプロ”は存在しないのか(1)

窪田順生(くぼた・まさき)

1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして活躍するほか、企業の報道対策アドバイザーも務める。

14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術 』(講談社α文庫)がある。


日本と海外では違う、広報に対する考え方

ノンフィクションライターの窪田順生氏

土肥(編集部) 日本でスピンドクター(情報操作の専門家)が普及する可能性はありますか?

窪田 正直、難しいでしょうね。

上杉 いまのところは無理ですね。まず認識がない。

窪田 僕はいま、企業の広報機能を強化しようとしていますが、本当に難しい。企業にはもちろん社長がいて、その下にたくさんの部署がある。例えば営業の力が強い会社で、営業部長が「マスコミなんて無視しておけ」といった会社だと、もうダメ。社長室が広報を担当していれば、その会社の広報機能を強化することもできるのですが、多くの企業はそうではない。

上杉 海外では広報の地位が高い。けど日本だとラインから外れた、いわゆる“終わった人”たちが、広報を担当していることが多い。

窪田 ラインから外れた人たちは、仕事に対するモチベーションが本当に低い。「マスコミの相手なんて、できることなら避けたい……」といった人が多いですね(笑)。

上杉 「オレが広報で仕事をしているときだけは、不祥事を起こさないでくれ」といった感じですよね。ちなみに日本で一番有名だった広報担当者といえば、ライブドアで働いていた乙部綾子さんでしょうか? 彼女は“勘違い広報”の典型でもありますが(笑)。

窪田 日本と海外では広報に対する、根本的な考え方が違います。企業の中に入って分かったことですが、マスコミ対応の考え方を変えるということは本当に大変ですね。

上杉 日本社会の悪いところとして「それは違いますよ」という人に対して、「そうか」と耳を傾けるのではなく「あいつ、何かヘンなことを言ってる」「変わっている」などで終わってしまう。

窪田 本当にそうですよね。

“逆切れ”した日本新聞協会

窪田 上杉さんは『ジャーナリズム崩壊』の本を書かれて、その中で記者クラブを批判されています。正論を言っているだけだと思うのですが、“変わり者”といった扱いをされていますよね。なぜ主要メディアは自分たちが行っていることが、オカシイということを理解しようとしないのでしょうか。

上杉 外務省の岡田克也大臣、金融庁の亀井静香大臣が記者クラブの扉を開けたため、あの2人がいまは「オカシイ」と呼ばれています。本当は当たり前のことをしているだけなのに。

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