松日樂さんは、スイスの旅行会社クオニイの日本法人クオニイ・ジャパンのスタッフだ。
「クオニイは、1906年にスイスのチューリッヒで設立された旅行会社です。欧州市場では、エンドユーザー向けに旅行プランを販売しています。売上規模では、ヨーロッパで3〜4位くらいに位置づけられますが、もともとハイエンド層を顧客ターゲットにしてきた会社ということもあって、商品力では欧州トップクラスとの評価をいただいています。ツアー商品としては、スイスだけでなく、欧州諸国はもちろん、アフリカ、アジア、米国など、世界中のあらゆる方面を扱っています」
クオニイと、日本などアジア諸国との関係は?
「1963年に日本法人を設立しました。しかし、B to Cが基本の欧州市場とは異なり、日本市場ではB to Bということで、日本の旅行会社さん向けに欧州旅行のパッケージプランを販売するようになりました。香港、韓国などを含め、アジア市場ではこうしたスタイルをとっています」
1963年といえば、海外渡航を厳しく制限された敗戦後の日本において、会社の業務などであれば渡航を広く認められるようになった年。そして翌1964年には、一般の人々が観光でも渡航できるようになった。
それ以来、すでに半世紀近く、クオニイ・ジャパンは日本人の海外旅行発展の歴史と歩調を合わせるかのように、日本国内でその立場を確固たるものにしてきたことが分かる。しかし、それにもかかわらず、その名を知る人が必ずしも多くないのは、日本市場ではエンドユーザーと直接接することのないランドオペレーターという業務内容ゆえであろうか。
21世紀に入ってからの世界の旅行業界は、まさに受難の時代を迎えている。2001年の「9・11米国同時多発テロ事件」を契機とする世界の航空需要の落ち込みによって、欧州においても、名だたる航空会社が何社も経営破たんに追い込まれた。追い討ちをかけるように2002〜2003年にはSARS(重症急性呼吸器症候群)が世界的に拡大、2003年にはイラク戦争が起こるなど、世界の航空会社や旅行会社には逆風が吹き続けた。
そういう中、クオニイ・ジャパンはどのような状況にあったのだろうか?
「確かにその時期は厳しかったようですね。それがようやく回復したのが2006年なのですが、昨年からは世界的大不況の影響でまた厳しい時代を迎えています」
全般的な状況が厳しい中でも一定して人気を保っているのは、どんなツアーなのだろうか?
「いつでも幅広く人気なのは『ロマンチック・スイス・パリ』です。これはドイツのロマンチック街道をたどり、スイス・アルプスの眺望を楽しみ、そしてパリに行くという定番のコースですね。欧州の人気観光地を1度に回れるので、欧州に初めて行く方が多く参加されています。
季節的な傾向で言えば、春先はお花が見ごろのオランダ・ベルギー、夏場はハイキングシーズンのスイス、年間通じて人気なのはオーストリア、ハンガリー、チェコなどの中央ヨーロッパ、イタリア、フランスといった感じでしょうか。
客層としては、熟年のご夫婦や、2〜4人くらいの女性グループが中心ですが、1人で参加される方やハネムーンの方々もいらっしゃいます。1ツアーあたり平均20〜40人くらいの規模です」
さて、いささか前置きが長くなってしまったが、そろそろ松日樂さんの日々の仕事ぶりを眺めてみることにしよう。
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