『咲-Saki-』『鋼の錬金術師』の田口浩司プロデューサーが語る、儲かるアニメの作り方劇的3時間SHOW(1/6 ページ)

» 2009年10月09日 10時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

 スクウェア・エニックスの田口浩司氏は10月6日、JAPAN国際コンテンツフェスティバルのイベント「劇的3時間SHOW」に登場、自身のアニメプロデュース経験などについて語った。

 田口氏は1961年生まれ、福岡県出身。1988年にエニックス(現スクウェア・エニックス)入社以来、営業部などの役員を歴任し、現在は出版事業部・音楽事業部・宣伝部を担当。2003年には『鋼の錬金術師』のアニメ化をプロデュース。以後、『ソウルイーター』『黒執事』『咲-Saki-』などのアニメ化も手がけた。今回の講演で田口氏は、出版社が利益を確保するためのアニメプロデュースのやり方について解説した。

田口浩司氏はスクウェア・エニックス所属ということもあって、登場時にはドラゴンクエストのテーマ曲が流れた

8年間で30本ぐらいアニメをやって赤字はゼロ

田口 「アニメのプロデューサー」ということで、事務局から最初にお話をいただいた時に申し上げたのですが、僕はアニメに「プロデューサー」という肩書きでクレジットされたことはありません。スクウェアとエニックスが合併する前のエニックス時代、ゲームのプロデューサーだったことはあるのですが、アニメでは「企画」とか「エグゼクティブプロデューサー」といった肩書きでクレジットされています。

 アニメの現場にいるものの、アニメの絵を描けるわけではありません。シナリオ会議にいたり、工程のチェックはしたりしますが、大きくは「アニメというものを使ったビジネス」にたずさわってきました。例えば、『鋼の錬金術師』だと、原作の漫画が盛り上がってきたので、アニメを仕掛けて、その後にゲームにしてという感じで、そのコンテンツ自体をふくらませていくということをやってきました。

 僕にとって「アニメコンテンツ」というのは、テレビアニメや劇場アニメだけではありません。ゲームも含まれますし、『スパイダーマン』『バットマン』『スポーン』などの実写映画も含まれます。コミックやゲーム、アニメなどにたくさんの作品がありますが、その集合体で1つのタイトルが構成されているものが増えているし、今後も増えていくだろうと思います。僕はアニメスタジオの人にアニメ制作でかないませんし、漫画家でもないので、そうした集合体で1つのタイトルを創造するビジネスをしたいと思っています。「今、日本のエンタテインメント業界に一番欠けている部分は、そうしたことができるプロデューサーの存在なのではないか」とよく話しています。

スクウェア・エニックス公式Webサイト

 僕はエニックス時代、ゲームや出版物、マーチャンダイジング商品、このすべての営業と宣伝の部長だった時代がありまして、その次にソフトウェア事業部長になって、ソフトの開発から宣伝、営業までをみるという立場になりました。そこで、2001年にWikipediaでも出ているようなエニックスお家騒動というのがあって、出版を経験していたことから、それを機に出版事業に移りました。

 出版事業に移ったのが8年前ですから、テレビアニメに関しては本当にど素人です。ですから、素人くさい視点もあるでしょうが、出版社としてのアニメビジネスの話をしたいと思います。

 「プロデューサーは何ができるか?」というと、作りたいものを作れる。だけど、もうけなければいけない。この2つができないと、プロのプロデューサーにはなれません。作りたいものはみんなあると思いますが、もうけないと会社は次のものを作らせてくれないわけです。また、売れないということはお客さまがお金を出してまで欲しいと思わないということ、それはバリューがないということですから、逆に売れたということはそれだけお客様に評価していただいたとも考えられると思います。

 (移る前に手がけていた)ゲームと比べて、アニメを使った出版ビジネスというのは実はとても簡単でした。本当にびっくりするぐらい簡単でした。この8年間で30本ぐらいアニメをやってきましたが、出版社サイドとしてどれ1つとして赤字になっていません。

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