人生の多くの時間を、私たちは“仕事”に費やしています。でも、自分と異なる業界で働く人がどんな仕事をしているかは意外と知らないもの。「あなたの隣のプロフェッショナル」では、さまざまな仕事を取り上げ、その道で活躍中のプロフェッショナルに登場していただきます。
日々、現場でどのように発想し、どう仕事に取り組んでいるのか。どんな試行錯誤を経て今に至っているのか――“プロの仕事”にロングインタビューで迫ります。インタビュアーは、「あの人に逢いたい!」に続き、戦略経営に詳しい嶋田淑之氏です。本連載では、知っているようで知らない、さまざまな仕事を取り上げていきます。
音楽業界の、それも大物アーチストを担当するディレクター、あるいはプロデューサー――。とても華やかで、いつも美女たちに取り巻かれ、夜な夜な、青山や代官山あたりのオシャレなお店でグルメに美酒にと、不況知らずの日々を送っている何ともうらやましい人々――そんなイメージを持つ人もいるかもしれない。
「いや〜、とんでもないですよ!」と苦笑するのは、CHAGE and ASKAの担当マネジャーとして、そして専属ディレクターとして、彼らと十余年の長きにわたって苦楽を共にしてきた村田努さん(44歳)だ。
「そんな、美女に囲まれて……なんて全然ないですよ。この世界は、本当にストイックで職人的な世界なんです。上下関係に厳しい世界ですし、封建的な古い体質も残っています。分かりやすい例を挙げるならば、度量衡の単位としていまだに尺貫法が使われているんですよ」と、優しげな顔をほころばせた。
「私の今現在の主な業務は、レコーディングのキャスティング、予算管理、スケジュール管理、クオリティ管理などです。そういうと、なんかデスクワーク的な仕事に聞こえるかもしれませんが、実際には制作現場に近い、クリエイティブな立場なんですよ」
世間一般のイメージと現実のギャップがかなり大きいと思われるこの世界――。そこでは、一体、どんな人生が営まれているのだろうか?
村田さんは1965年生まれ。神奈川県逗子市育ち。魚座のO型。
「幼いころからピアノをやっていて、中学校ではギターも弾いていました。でも高校までは、野球やバスケなどスポーツ中心の生活でした」
大学進学時など、将来、音楽業界に入ることを意識しなかったのだろうか?
「その当時は、まだ全然……でしたね(笑)。とにかく、親が期待し要求するエリートコースへの反発があって、大学も就職予備校みたいなところには行きたくなかった。だから、法政大学文学部の哲学科に入って、臨床心理を学んだんです。あと、専攻とは別に、同時通訳の勉強もしていました。
サークルは法政じゃなくて、明治大学の音楽サークルに入り、そこで打ち込みました。担当はギターとキーボードです」
大学のサークルに入ってようやく音楽に“開眼”したようだが、それにしても、かなりマジメな大学生活のように見えるが……。
「いや〜教室ではなく、部室に入り浸っていましたし、夜は仲間たちと酒ばかり飲んでいました」と照れ臭そうに笑う。
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