「NO MORE 映画泥棒!」のキャンペーンに効き目はあるのか誠 Weekly Access Top10(2009年8月8日〜8月14日)

» 2009年08月17日 19時50分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]

 先週最も読まれた記事は、「履歴書でこれはアウトと思うのは」。2位は「異性受けする音楽はコレ」、3位は「会社を辞めたい……そう感じる人が多い業種」。1位から3位まで、調査記事が独占するランキングとなった。

 2位の「異性受けする音楽はコレ」の記事を読んで、「これは異性受けするのではなく、『カラオケで歌ったり、話のネタにするなら売れ筋J-POPが無難』というだけなのでは……」と思った話はさておき、今週はまったく関係ないキャンペーンCMの話。

見るたびに不快になる、あるキャンペーンCM

「NO MORE 映画泥棒!」のキャンペーンポスター(「映画館に行こう!」委員会の公式サイトより引用)

 映画館で本編上映前に流されている「NO MORE 映画泥棒!」というキャンペーンCMをご存じだろうか。ビデオカメラが頭になっているスーツ姿の“映画泥棒”が、パントマイム風な身のこなしで無言で踊りながら、サーチライトで照らされたり、彼を捕まえようとする人から逃げたりしようとする内容だ。映画泥棒は最後に捕まり、「劇場内での映画の撮影・録音は犯罪です」「法律により10年以下の懲役、もしくは1000万円以下の罰金、またはその両方が科せられます」という警告が流れる。

 なぜこの話題を取り上げるかというと、筆者はこのキャンペーンCMを見るたびに不快な気持ちになるから。予告編上映が終わり、いよいよ本編が始まるというわくわくした瞬間にこのキャンペーンCMが流れると、「お金を払って、楽しみに映画を見に来ている客に向かって泥棒扱い?」と非常に嫌な気分になる。改めて考えてみれば「あなたの隣に映画泥棒がいるかもしれないから見つけたら通報しなさい」という内容であり、映画を見に来た客を泥棒扱いしているわけではないのだが、パントマイムが妙にうまいせいなのか、CM中の照明やサイレンの音がやたら仰々しいせいなのか、見る者をなんとも不快な気分にさせるのだ。

 このCMが流れない映画館があるなら、少しくらい遠くてもそこへ見に行きたいくらい嫌なのだが、ほぼ全ての映画館でこのキャンペーンCMを流しているようで、そうもいかない。おかげでここ1年くらい、映画を見るたびに、毎回嫌な気持ちになっているのだ。

 ついさっき、「盗撮映画流した疑いで逮捕 『シェア』使用、京都府警」(参照リンク)というニュースが流れていた。映画館で盗撮した映画「クローズZERO2」をネット上に流していた男性が逮捕された、という事件だ。筆者が気になったのは、「日本映像ソフト協会によると、国内映画館で盗撮された映画のネット流出で逮捕者が出たのは初めて。」という1文だ。

 全国の映画館であれだけ大量にキャンペーンCMを流しているのだから、さぞかし“映画泥棒”がたくさんいるのだろうと思っていたのだ。実際、別の記事によれば、「日本国際映画著作権協会(MPA)によると、ネット上への流出や違法DVDの海賊版流通など、劇場公開映画の盗撮による年間の推定被害額は、平成17年度調べで約180億円に上ったという」とある。1年以上あのCMを大量に流し続けて、ようやく初めての犯人を捕まえられたということは、「映画館でキャンペーンCMを流してもほとんど犯人を捕まえる効果はない」ということなのではないか?

 容疑者は著作権法違反(公衆送信権侵害)の疑いで逮捕されたのだが、著作権法違反者を捕まえるのに映画館でCMを流すという行為が効果があるとは思えない。映画を盗撮する気で準備して来ている人だったら、あのCMを見たくらいではやめようと思わないだろう。そもそも、映画泥棒が罪だと訴えたいのなら、お金を払って映画館にやってきた客でなく、違法な映像をネットで見て楽しんでいる人や、違法なDVDを購入した人が見るような場所に露出しなくては意味がないのでは……。そんなことを思ったニュースだった。

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