なぜちきりんさんは、正体を明かさないのですか?上杉隆×ちきりん「ここまでしゃべっていいですか」(1/2 ページ)

» 2009年07月23日 07時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 ジャーナリスト・上杉隆氏と覆面ブロガー・ちきりんさんの異色対談2回目。今回は正体を明かさないちきりんさんが、ブログを始めたきっかけなどについて語った。

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実名を出すのが「面倒くさいな」と感じた

上杉 ちきりんさんは覆面でブログを始められていますが、きっかけを教えてください。

ちきりん 私は普通に大学を卒業し、大手の金融機関で働いていました。しかしそこを退職し、外資系の投資銀行で働こうと思ったのですが、その会社は日本の大学を卒業した人を相手にしていなかった。米国の大学を卒業していないと、「最終学歴を満たしていないわよ」といった雰囲気。

 「じゃあ私も海外に留学しよう」ということで、27歳から2年間、海外で過ごすことに。そして日本に戻って来て「また金融機関で働くか……」と考えたのですが、当時はバブル経済がはじけたばかり。これから“落ちていく”業界を選ぶよりも「違ったところのほうがいいかな」と思い、今は畑違いの外資系で働いています。

上杉 で、仕事をしながらブログを続けていらっしゃる?

ちきりん もともと「書く」ことはとても大好きなんです。中学生のころ、自分が考えたことなどを書いて、クラスメートに読んでもらったりして。それは交換日記といったものではなく、私だけが書いて、それを読みたい人が読むというもの。そして人から「面白い」と言われると、調子にのって書いていました(笑)。だからといって、メディアの世界で働こうとは思わなかったですけど……。

 ブログを実名で書いていらっしゃる方は多いですが、まだまだ自分が所属している組織(会社)とその人の意見を一緒にされてしまうことが多い。ブログの内容をめぐって誤解されることも多く、実名を出すのが「面倒くさいな」と感じたんです。ただ先ほど申しあげた通り、書くことは好き。しかも読んでもらうことは、もっと好き。もし私が匿名で書いたらどのくらいの人に読まれるのか? そういった好奇心からブログを始めたのです。

 実名を出さずに、私のブログを読んでくれる人。その人たちは、私の文章が面白いから読んでくれているということ。どのくらいの人が読んでくれるのだろうか? このことを試すために、名前を出さずに書くことにしたのです。

ちきりんさん

 しかしブログを始めたころは、ほとんどの人が読んでくれませんでした(笑)。2005年の3月ころから始めたのですが、最初のころは月3000PVほど。でも2008年ころから読者の数が増えてきて、最近では月40万PVほどになっています。

上杉 偶然ですが、僕もブログを始めたのは2005年の3月です。しかし僕の場合気まぐれだったり、面倒くさくなったりして、毎年3月になると休止したり、タイトルを変えたりして内容を変えています。ちきりんさんはどのくらいのペースで更新されていますか?

ちきりん 週2日は休むことにしているので、月20日ペースでブログを更新していますね。

上杉 僕のブログもピーク時、月に40万PVありました。けどブログのタイトルを変えたりしているので読者が散って、アクセス数は減っています。また最近は、あまり更新していないので、読者数はさらに減っていますね。

ちきりん 面倒になってブログを更新されないのですか?

上杉 いや面倒というより、忙しくて更新することができないのです。かつては毎日、今は週1本ペースで更新することを考えているのですが、それも難しくて……。

 そもそもブログを始めたきっかけは、自分の記事を“管理”するため。自分が書いた記事を掲載しておくと、同業他社の人がチェックしてくれるんです。そして「上杉はこんな仕事をしているのか。じゃあ、コメントをもらおう」といった感じで、仕事につながることが多い。

 ブログを始める前は、僕の記事に対しいろんな人が反論していました。反論してくれるのはいいのですが、「上杉隆」で検索すると、その人たちの批判的な文章ばかりが上位に並んでいた。そのままにしておくと、「上杉隆」のイメージがすごく悪くなる。なので“反論権”の意味も含め、自分のブログを始めたのです。……ブログを始めても、イメージは悪いままですが(笑)。

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