アニメを海外に売り込む方法――映画プロデューサーの仕事とは(後編)(1/3 ページ)

» 2009年06月13日 07時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

 産学共同映像研究所は5月23日、東京ディストリビューション・オブ・コンテンツセミナー(TDCS)の一環としてGONZOの内田康史氏を講師に招き、「TDCSワークショップ」を開催した。前編では映画プロデューサーの仕事についての話が中心だったが、後編では内田氏が自身の経験をもとに語ったアニメの海外展開の方法について紹介する。

映画はこうして作られる――映画プロデューサーの仕事とは(前編)

海外展開のやり方は4つ

 日本のアニメを海外展開をする場合にどういう方法があるかというと大きく4つに分かれます。1つ目はできあがったアニメを海外にライセンスする(貸し出す)という仕事。2つ目はもの作りの段階から海外と一緒にやっていくという形(共同プロダクション)。3つ目は僕らが作ったアニメをもとにハリウッドでリメイクしようという方法。4つ目はライセンスとも非常に近いのですが、自分たちが米国に支局を持って、米国の配給会社あるいはテレビ局として作品を流通させていくという方法です。

GONZOの内田康史氏

 普通の会社がやっているのは1つ目のライセンスです。日本の会社が米国の会社に7〜13年くらいの期間を限定して貸し出すのですが、これだけ最初にお金をくださいという最低保証金額(ミニマムギャランティ)を設定します。そして7〜13年経ったら、いったんこの契約は全部破棄して、もう一度継続しなおすかどうか考えましょうという契約です。

 ミニマムギャランティの計算法はいろいろあるのですが、期間中に彼らは10万本のパッケージを売ろうと思っていたとします。(DVDなどを)1本当たり5000円で売ってその20%は作品を貸し出した日本の会社に戻しましょうということになれば、1000万円(5000円×20%×10万本)のお金をミニマムギャランティとして支払うという交渉になります。

 10万1本目からは向こうも商売としては成り立っているので、ライセンス料を30%(1500円)に上げようというような条件が付いていたりします。彼らから3カ月に1回くらいレポートが来て、「10万枚売れました」となると、そこからは1本売れるごとに1500円入るというように、日本の権利元に少し余分にお金が支払われる状況になってきます。これを業界用語では「オーバーエッジ(Overage、追加分)が出たね」という言い方をします。

 共同プロダクションは最近少し増えてきていて、2003年の『アニマトリックス』(ワーナー・ブラザーズ)が代表的な作品です。『マトリックス』のアニメ版なのですが、この辺りから米国と日本のクリエイティブスタッフが一緒にものを作るスタイルが増えてきました。ちなみにその時にワーナー・ブラザーズ側のプロデューサーだったマイケル・アリアスは今、日本に住んで映画監督になっていて、『鉄コン筋クリート』は彼がプロデューサーから監督に立場を変えて初めて作った作品です。

 ディストリビューションは例えば小学館と小学館集英社プロダクション、集英社が一緒に米国でビズピクチャーズという会社を立ち上げて、小学館や集英社のアニメをその会社で配給しようというビジネスです。『DEATH NOTE』の配給なんかはそうやっています。ライセンスビジネスを海外でする際に米国の企業と一緒にやると、比較的収益が取られやすくなります。そうした会社がノウハウを持っているから安心して任せられるということも言えるのですが、もうかった時にうまみがないので自分たちでやってしまおうということです。

 リメイクでは、日本のどんなアニメの実写化がハリウッドで進んでいるのかというと、20世紀フォックスから公開された『ドラゴンボール』がありますが、『攻殻機動隊』『ガッチャマン』『Astro Boy(鉄腕アトム)』も進められています。それから『DEATH NOTE』はワーナー・ブラザーズがやっています。

ハリウッドで実写化された『ドラゴンボール』(出典:『DRAGONBALL EVOLUTION』公式Webサイト)

 ハリウッドには新しい話を作れる人がいなくなっていて、日本からこうした原作の権利を買わないと映画を作れない状況になってきています。日本はマンガという文化が大きくあるので、原作が潤沢にあります。プロデューサーのスキームの最初の部分、原作探しについては日本でしようという流れが今できてきている気がします。しかし、問題は日本は米国に比べると契約社会ではないため、この辺の契約のやり方が得意ではないので、米国のプロデューサーの交渉に負けながら、海外にどんどん作品が流出しているということは言えると思います。

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