高速道路“1000円時代”に売れるのは?神尾寿の時事日想(1/2 ページ)

» 2009年04月20日 07時00分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

著者プロフィール:神尾 寿(かみお・ひさし)

IT専門誌の契約記者、大手携帯電話会社での新ビジネスの企画やマーケティング業務を経て、1999年にジャーナリストとして独立。ICT技術の進歩にフォーカスしながら、それがもたらすビジネスやサービス、社会への影響を多角的に取材している。得意分野はモバイルICT(携帯ビジネス)、自動車/ 交通ビジネス、非接触ICと電子マネー。現在はジャーナリストのほか、IRIコマース&テクノロジー社の客員研究員。2008年から日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)選考委員、モバイル・プロジェクト・アワード選考委員などを勤めている。


 3月28日から、“定額1000円”の休日特別割引を含む高速道路の大幅割引が始まった。高速道路会社をまたぐ場合の定額対応は4月下旬にずれ込むが、ゴールデンウィーク前には完全実施が実現する模様。2008年は原油高の影響で公共交通に押され気味だった国内のクルマ旅行が、“コストの安さ”からがぜん魅力的になってきた。特に家族連れやグループなど、複数人での休日移動コストはクルマが圧倒的に安くなるだろう。

 さて、この休日特別割引。利用するにはETCが必要ということと、国土交通省の助成金キャンペーンもあって「ETC取り付けラッシュ」が全国で起きている。しかし、もう少し長い目でみると、休日特別割引の波に乗れるかで、さまざまなモノやサービスの魅力で差が付きそうだ。

新料金対応ナビやミス防止ETCが登場

 休日特別割引を含む高速道路の大幅割引は、消費のカンフル剤として政治的に駆け足で決まったものだ。当初から計画されたものではなかったので、新料金対応はドタバタ。特に大きな影響を受けたのが、カーナビゲーションの「高速道路の利用料金案内」機能だった。ほとんどのカーナビが新料金に対応していないのだ。

 そのような中、柔軟性とフットワークのよさを見せつけたのが、サーバーと連携する「通信型カーナビ」だ。

 本田技研工業(ホンダ)の純正カーナビである「インターナビ」は、3月28日からの新料金体制に即日対応。通行料金を比較してもっともお得なルートを提案する「ETC割引ルート」に、休日特別割引を含む新料金プランのデータを反映させた。さらにインターナビユーザー向けの会員向けWebサービスでも、新料金に対応したドライブプランの作成が可能になっている。

 インターナビは以前から新規開通した道路の地図データを即日対応させるなど、交通環境が変化した時の“対応の速さ”をセールスポイントにしてきた。その強さが、今回の新料金対応でも如実に表れた格好だ。

 インターナビに続いて新料金プランに対応したのが、携帯ナビの「NAVITIME」と「EZナビウォーク/EZ助手席ナビ」だ。こちらは携帯電話で利用する助手席ナビだが、4月15日から休日特別割引を含むETC割引料金に対応している。NAVITIMEのサービスでは、出発時点でのお得な割引ルートの計算のほか、出発日時を変えた場合に料金がどう変わるのかもシミュレートできる。

 現時点では、インターナビ以外の車載カーナビはほとんど今回のETC大幅割引に対応していない。NAVITIMEやEZナビウォーク/EZ助手席ナビは手持ちの携帯電話で利用可能であり、利用料金も月額315円と安い。手持ちのカーナビと併用してもいいだろう。

 一方、今まさに「爆発的に売れている。助成金と特別割引で特需状態だ」(大手カー用品店 担当者)というETCユニットにも、高付加価値型の新製品が登場した。

 パナソニックオートモーティブシステムズ(PAS)は4月16日、業界初の「ETCカード有効期限お知らせ」機能を搭載したアンテナ分離型ETC車載器『CY-ET909D/KD』とアンテナ一体型ETC車載器『CY−ET809D』を発表。5月20日から発売する。

CY-ET909D/KD(センターコンソール脇、左)、(フロントウィンドウに貼り付け、右)

 今回のETC大幅割引でETC利用者が急増することが予想されるが、その副作用として増えそうなのが、ETCゲート通過時のトラブルだ。特に日常的にクルマに乗らないドライバーが、特別割引めあてで“休日だけ高速道路に乗る”ようになると、ETCカード期限切れでゲートが開かず接触事故につながるというケースも考えられる。PAS社の新型ETCユニットは、そうしたトラブルを未然に防ぐというものだ。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.