次世代のターゲットは“地熱”――ドイツの再生可能エネルギー開発松田雅央の時事日想(1/2 ページ)

» 2009年03月17日 11時51分 公開
[松田雅央,Business Media 誠]

松田雅央(まつだまさひろ):ドイツ・カールスルーエ市在住ジャーナリスト。東京都立大学工学研究科大学院修了後、1995年渡独。ドイツ及びヨーロッパの環境活動やまちづくりをテーマに、執筆、講演、研究調査、視察コーディネートを行う。記事連載「EUレポート(日本経済研究所/月報)」、「環境・エネルギー先端レポート(ドイチェ・アセット・マネジメント株式会社/月次ニュースレター)」、著書に「環境先進国ドイツの今」、「ドイツ・人が主役のまちづくり」など。ドイツ・ジャーナリスト協会(DJV)会員。公式サイト:「ドイツ環境情報のページ(http://www.umwelt.jp/)


 太陽光、風力、水力、バイオマスなど数ある再生可能エネルギー※の中で、近年、特に注目を集めているのが地熱だ。例えば、ドイツ政府による再生可能エネルギー研究補助(下図)の割合をみるとその傾向がよく分かる。

※再生可能エネルギー……自然エネルギーや循環型エネルギーの総称。また、ゴミ埋め立て処分場から収集したり、生ゴミ発酵処理場で生産するメタンガスも含む。
再生可能エネルギー研究補助の分野別割合(出典:“Entwicklung der erneuerbaren Energien in Deutschland im Jahr 2007”,BMU,2007)

 1996年から2005年までの10年間に「第4次エネルギー研究プロジェクト(総額8億4300万ユーロ)」が実施され、その約3分の2が再生可能エネルギーに当てられた。これは日本に次ぐ世界第2位の規模で、分野別にみると太陽光発電・太陽熱発電・太陽熱(低温)利用、すなわち太陽エネルギーが67%(2005年)を占めている。

 これに続く第5次エネルギー研究プロジェクトにおいても太陽エネルギーの割合は50%を越すものの、増加割合は地熱が最大であり2005年の12%から24%へと倍増する。現在、ドイツで実際に利用されている地熱エネルギーは非常に少なく全再生可能エネルギーの1%にさえ満たないが、将来のポテンシャルは決して小さくない。

ドイツにも温泉

 地下深部にはマグマが存在し膨大な熱エネルギーが眠っている。このエネルギーを蒸気や熱水の形で取り出すわけだが、昔から利用されている最もポピュラーな地熱資源が温泉だ。

 ドイツにもバーデン・バーデン(Baden-Baden)、バート・ヘレンアルプ(Badherrenalb、下写真)といった温泉保養地があり、とりわけバーデン・バーデンの温泉はローマ時代の遺跡が出土するほど歴史が古い。地下1200〜1800メートルから湧き出る温泉は56〜69℃、湧水量は1日あたり80万0000リットル。日本のような「熱い温泉」ではなく、ぬるま湯程度の「温泉プール」として水中運動に利用することが多い。

 ちなみに、ドイツの地名で頭にバーデン(Baden)やバート(Bad)が付くのは、その地に温泉が湧き出ることを意味する。

バートヘレンアルプの温泉プール
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