グロービスで受講生に愛のムチをふるうマーケティング講師、金森努氏が森羅万象を切るコラム。街歩きや膨大な数の雑誌、書籍などから発掘したニュースを、経営理論と豊富な引き出しでひも解き、人情と感性で味付けする。そんな“金森ワールド”をご堪能下さい。
※本記事は、GLOBIS.JPにおいて、2009年2月27日に掲載されたものです。金森氏の最新の記事はGLOBIS.JPで読むことができます。
コンビニの棚は各社の戦いの最前線である。生き残りをかけた、マーケティング担当者たちのギリギリの戦いが続いているのだ。今回は茶系飲料の棚から、その模様をのぞいてみよう。
コンビニの飲料ケースの棚を見ると、まずキリンビバレッジの「潤る茶(うるるちゃ)」のパッケージ変更に気付く。CMで仲間由紀恵が「うるおう理由は、素材にあったんだ」と言う、ビタミンCやコラーゲンなど13種類の素材が、「潤う」をイメージさせるしずくの形で表現されている。
茶系飲料の中で、多数の素材を用いた「ブレンド茶飲料」の元祖は十六茶だ。1985年に発売され、1993年からアサヒ飲料が発売元となり、缶・ペット容器入り飲料として発売。大ヒットとなった。
その1993年に対抗馬として販売されたのが日本コカ・コーラの「爽健美茶」である。飲料業界第1位の同社は、業界リーダーの戦略の王道である「同質化」が得意だ。下位のポジションにある企業のヒット商品の特性に、優れた開発力ですぐに追随。販売後、先行商品の存在をかき消すように、強大な販売力で市場を席巻する。スポーツ飲料カテゴリーにおける、大塚製薬の「ポカリスエット」に同質化戦略をしかけた「アクエリアス」も同社の製品である。
1993年に「茶流彩彩」ブランドでスタートした爽健美茶は1999年に単独ブランドとして独立。大ヒットとなり、ブレンド茶飲料におけるトップシェアを維持し続けている。
事業ポートフォリオを考える際よく用いられる「PPMモデル」で考えてみよう。このモデルは、「成長性」と「マーケットシェア」という2軸でマトリクスをつくり、事業を四つの象限に類別する。
定番化した爽健美茶は、日本コカ・コーラの製品ポートフォリオでは、シェアは高いが成長性は低い「金のなる木」となった。ポートフォリオマネジメントの定石は、シェアは低いが成長性は高い「問題児」のポジションに商品を上市し、「金のなる木」で稼いだ収益で、シェアも成長性も高い「スター」に育成することだ。
その原則通り、同社は「からだ巡茶」を同じブレンド茶カテゴリーに投入した。商品名は「体の中からキレイを目指す」を意味するといい、女性を明確にターゲットにした。薬日本堂と協力して製品作りにも力を入れ、CMを大量投入するプロモーションにも注力した。
「スター」のポジションに育成する狙いだったのだろう。
現状のシェアは不明ながら、コンビニの棚を2フェイスしっかりおさえていたことから、しっかり売れ、「スター」に育ったと推測できる。
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