マクドナルドは本当に「勝ち組」なのか? アヤシイ会計処理に“ひとこと”現役東大生・森田徹の今週も“かしこいフリ”(1/3 ページ)

» 2009年02月25日 13時20分 公開
[森田徹,Business Media 誠]

著者プロフィール:森田徹

1987年生まれ、東京大学教養学部文科二類在学中(4月から経済学部経営学科に進学予定)、聖光学院中高卒。現在、東大投資クラブAgents自民党学生部東京大学裏千家茶道同好会のサークルに所属している。投資・金融・経営・政治・コンピュータ/プログラミングに興味を持つ。日興アセットマネジメント主催「投信王 夏の陣」総合個人優勝、リーマン・ブラザーズ寄付講座懸賞論文最優秀賞。


 外食産業の“勝ち組企業”の1つといえば、赤地に黄色のMのマークが印象的なマクドナルドである。この不況下でも、日本マクドナルドの2008年12月期連結決算は売上・利益ともに過去最高を更新。不況で冷え切った顧客心理を魅力的な新商品と低価格で“わしづかみ”……といった論調の取り上げ方が目立つ。

 そもそもマスコミというのは、勝ち組というものが好きなのかもしれない。加えて世界同時不況という逆風の中での勝ち組なのだから、報道のされ方はほとんど「英雄」に近い。逆境に立ち向かう漢(おとこ)は、いつだってヒーローと相場が決まっているのだろう。

 だが、ヒーローだってきちんと調べればすねに傷を持っているかもしれない。もし、ヒーローが悪の結社と結託して自らの栄光を演出していたら――物語の中ではありえないが、現実世界ではそういう話もあるかもしれないのだ。

 というわけで今回は、マクドナルドの過去最高と評される業績が“アヤシイ”というお話だ。

マクドナルドの問題点

 もろもろの話を始める前に、まずは何がアヤシイのか? を説明しておかなければならない。

 今回の問題は、マクドナルドが直営店をフランチャイズ店にするときの「店舗売却益」を売上に計上している点である。具体的には、509店舗が直営店からフランチャイズ店に区分変更されるとき(=マクドナルドからフランチャイズ・オーナーへ店舗が売却されるとき)、店舗設備売却収入の約92億円(91億9900万円)のうち、店舗売却益の約43億円(43億3500万円)がフランチャイズ収入としてそのまま売り上げに計上されているのである。

 では、なぜこれが問題になるのか? 順を追って説明していこう。一般的に、マクドナルドはハンバーガーを売って儲けている会社だと思われている。マクドナルドのWebサイトを見ると、業務内容はこう書かれている(関連リンク)。「ハンバーガー・レストラン・チェーンを中心とした飲食店の経営及びそれに関連する事業を営む会社の株式を所有することによるグループ連結経営の立案と実行」と。

 店舗売却益43億円という数字は、売り上げに対し1.07%と微々たるものだが(売上高成長率2.9%の中では大きいともいえるが……)、営業利益は22.18%押し上げているため「利益の水増し」だと思われても仕方がない面がある。そもそも店舗売却益は経常的に発生する利益ではないのだから、特別利益※に計上されるべきだろう。

※特別利益:当期の活動とは直接関連せず、“毎期継続的に発生しない”もの。また営業外損益項目とは、主目的たる営業事業から生じる収益・費用ではないが、“毎期経常的に発生する”もの。

 これだけでマクドナルドの会計処理が“アヤシイ”と言われても、よく分からないという読者の方も多いかもしれない。そこで投資家としての「そもそも論」的な視点で見ていこう。

 まず財務諸表というのは外部のステークホルダーに開示される以上、会計基準は一般性を持たなければならない。財務諸表は事業の成績表なのだから、その採点基準がバラバラでは公平に評価することが難しい。

 なのでマクドナルドの財務諸表に、主要な事業とは考えられない利益を売り上げに計上するのは感覚的に“おかしい”。もしこれが許されるなら、多くの企業は不動産の類の業務を定款に掲げ、自社ビル売却益や店舗売却益などを売り上げに計上するかもしれない(ちなみに不動産業者は売買目的の土地建物を棚卸資産で有しており、固定資産でB/S上に載ることはない)。

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