どうすれば評論家になれるのか? その方法とギャラ山崎元の時事日想(1/2 ページ)

» 2009年01月15日 07時00分 公開
[山崎元,Business Media 誠]

著者プロフィール:山崎元

経済評論家、楽天証券経済研究所客員研究員、1958年生まれ。東京大学経済学部卒業後、三菱商事入社。以後、12回の転職(野村投信、住友生命、住友信託、シュローダー投信、バーラ、メリルリンチ証券、パリバ証券、山一證券、DKA、UFJ総研)を経験。2005年から楽天証券経済研究所客員研究員。ファンドマネジャー、コンサルタントなどの経験を踏まえた資産運用分野が専門。雑誌やWebサイトで多数連載を執筆し、テレビのコメンテーターとしても活躍。主な著書に『会社は2年で辞めていい』(幻冬舎)、『「投資バカ」につける薬』(講談社)、『超簡単 お金の運用術』(朝日新書)など多数。ブログ:「王様の耳はロバの耳!


 現在、あるいは将来の職業ないし副業として「評論家」をやりたいと思う読者はどのくらいいるだろうか。仕事の経験、あるいは趣味の経験を生かして評論家になることができる人は、ビジネスパーソンの中にも、相当の割合でいるのではないかと筆者は常日頃から思っている。

 それでは「評論家」になるには、どうすればいいのか。先ずは、「○○評論家」と名刺を作ればいい。それで、あなたは評論家だ。評論家になるのに、資格は必要ないし、何らかの組織に属さなければ活動できない、ということはない。

 しかし、評論家を名乗っただけで、いきなり仕事の依頼がわいてくるわけではない。たいていは、いくつかの段階を踏む必要がある。

評論家のビジネスモデル

 いきなり注目された人(特殊な経験や才能を持っている人)を除くと、評論家のビジネスモデル(というほど大げさなものではないが)は概ね以下のようなものだ。

(1)単著の本を出して「専門家」として認知される。

(2)メディア(象徴的にはテレビ)に出て「知名度」を上げる。

(3)知名度を生かして講演やセミナーで稼ぐ。

 まず、世間に何らかの分野の専門家として認知されることが必要だが、そのためには本を出版するのが手っ取り早い。著書があると、メディアが取材の相手を探すときに検索エンジンに引っ掛かるようになる。例えば、政治に詳しい記者なり文科系の研究者なりが『政治家の病気と死』というようなタイトルの本を出したとすれば、有名政治家が病に倒れたときにテレビから取材が来て「政治家の病気の問題に詳しい、○○氏」と紹介される。

 単行本を出すには、まず出版社に企画を持ち込むことだ。出版の狙い(出版社の立場に立って書く)や構成案(できれば詳細な目次案)などとともに、過去に雑誌などに自分が書いた関連テーマの記事があると判断してもらいやすい。雑誌に記事を書くところがハードルになるかもしれないが、ブログでもいいだろう。出版者側にとっては、他人の目に触れる形で、商品になる品質の原稿を書いた実績があるかどうかが重要なのだ。あえていえば、この段階である程度のスクリーニングがかかっているといえる。

評論家の収入源は3つ

 筆者は現在、評論家は「本業に近い副業」だが、15年くらい前に資産運用の専門書を書いたことがあり、後から振り返ると、これが大きかった。この段階で、資産運用関係の講演やセミナー講師の依頼が来るようになった。その前に、金融・経済の専門誌の原稿を匿名でかなり書いていたので、それがある程度の信用になって、単行本の企画が通った。

 テレビなどメディアに出るきっかけは一種の「縁」だが、自分がコメントできる分野があれば、コネをたどって売り込むことは可能だろう。筆者の場合、単行本の著書や雑誌の原稿が先方の目に触れて、数年前から、時々テレビに出るようになった。あえて1つ挙げると、「JMM」(作家の村上龍氏が主宰・編集するメルマガ)を読んでいるメディア関係者が多く、これがきっかけになったケースが複数ある。

 テレビの広報効果はやはりそれなりに大きく、テレビ出演が増えると、講演の依頼が増えるという関係は強い。また、頻繁にテレビに出るようになると、テレビのギャラはそれほどでもないが講演の価格が上がるようだ。

 評論家の収入源は大別すると、(1)原稿料・印税、(2)テレビなどの出演料・取材謝礼、(3)講演料・セミナー講師料、の3つある。

 それぞれの具体的な金額やそのビジネス構造に関しては、別の機会にまた詳しく書こうと思っているが、まず原稿料、出演料の2つは、ビジネスパーソンの感覚から率直に言って、そう高いものではない。媒体によって価格設定は大きく異なるが、特別有名ではない著者が雑誌の1ページ(400字詰め原稿用紙4枚くらい)の原稿を書いたとして、高くて5〜6万円くらい、多くは3万円くらい、という感じだろうか。最近ネットの媒体が増えているが、ネット媒体での原稿料設定は、紙媒体の大手よりも安いことが多いし、長期的な傾向として、世の中の原稿料の文字数当たり単価は下落している。

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