ドイツの代表的なアルコール飲料といえばビール。国別生産量は中国・米国・ロシアに次ぐ第4位、1人当たりの消費量116リットルはチェコ、アイルランドに続いて世界第3位だ。(ビール酒造組合のWebサイト参照)
ビール通はご存じかと思うが、ドイツのビールは長らく「水・麦芽・ホップ・酵母以外の原料を使用してはならない」という「ビール純粋令」に基づいて生産されてきた。それだけにビールの品質を左右する水や原料には最大限の注意が払われる。最近はビオ農作物(有機農産物)を使用するビオビールも増えてきたが、ビール醸造マイスターに話を聞くと、ドイツビールは元々原料にこだわっているため、ビオビールと通常のビールに品質の差はほとんどないそうだ。
1516年にヴィルヘルム4世が発布したビール純粋令は世界最古の食品条例とされ、ドイツビールの品質とうまさの原点となった。残念ながら非関税障壁という批判を受け1987年に廃止されてしまったが、今でもなお多くの醸造所がこの純粋令を守っている。
ビールの歴史は非常に古く、古代メソポタミア時代までさかのぼる。
原始ビールは、そのままでは製粉が難しく消化もよくない大麦を食べやすくする工夫から生まれ、高カロリー食品として貴重なものだった。大麦の麦芽を使って一種のパンを焼き、それを水に漬け、麦芽の酵素を使ってデンプン質を糖質に変え、それから酵母を使って発酵させていた。ちなみに、ビールという名前はラテン語の「biber(飲む)」からきているとされる。
中世になるとヨーロッパの修道院でビール醸造が盛んになる。当時のビールはアルコール分が低く、また熱処理するため、衛生的な水を得ることが困難な時代にあって子供にも適した飲み物とされていた。
ビール史上画期的な出来事とされるのがラガービールの発明だ。それ以前から、軽く焙煎(ばいせん)した麦芽を使い、冬から春にかけて洞穴など低温の場所で長時間醸造する下面発酵ビールがバイエルンビールとして知られていた。1842年にヨセフ・グロールがこの製法を体系的に確立し、その後の冷蔵技術の発達もあってラガービールが一気に世界の主流となった。
冷蔵機械が発明されるまで、ビール貯蔵にはなかなか苦労が多かった。夏のビールはミュンヘンを流れるイザール川沿いの地下蔵に低温貯蔵し、必要に応じてたるで街に運び、酒屋の地下に貯蔵していた。酒屋でビールを小売するだけでなく、いっそのことその庭でビールを飲めるようにしよう、というのがビアガーデンのアイデアだった。
ビールは手軽な飲み物であるだけに、値上げは庶民の生活を直撃する。1848年10月には、度重なる値上げに怒った庶民がミュンヘンで暴動を起こしている。怒りの矛先は価格決定権を握る醸造業者に向けられ、死者1名負傷者多数を出す騒ぎとなった。
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