1929年の教訓に学べ――株価暴落と内部統制の関係誠 Weekly Access Top10(2008年11月1日〜11月7日)

» 2008年11月10日 20時05分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

 先週最も読まれた記事は「『幽霊なんて出ませんよ』――格安家賃の“事故物件”を探してみた」。首都圏に住んでいる人にとって高い家賃は大きな負担となっているようで、「ぜひ事故物件に住んでみたい」という声も多かった。中には、「むしろ幽霊の出る部屋に住みたい」という意見まで見られた。

1929年の大恐慌に学ぼう

ジョン・ケネス・ガルブレイス著 村井章子訳『大暴落1929』(日経BP社刊)

 10位に入ったのは「株暴落ワースト10社……下げが止まらぬ銘柄」。米国の金融不安を受けて、日経平均株価は歴代下落率ワースト20にランクインするような暴落を10月に6回も記録した。11月に入っても、6日にワースト16位の下落率を記録するなど、その流れはまだ続いている。11月10日終値時点の日経平均株価は、8月末よりも30%ほど低い水準だ。

 一連の暴落で日経平均株価は1万円割れどころか、バブル後の最安値までも更新してしまった。ほとんどの人が予想できなかったこの状況、一体これからどうなるのだろうか。そこで、「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」(ビスマルク)ということから、経済学者ガルブレイス氏の著書『大暴落1929』を読んでみた。『大暴落1929』は1929年の大恐慌前後の出来事を記した作品、帯には「バブル崩壊、株価暴落のあとに必ず読まれる、恐慌論の名著」とある。

 もちろん、1929年と現在とでは国際情勢や市場制度など異なっていることは多い。しかし、利益を求め、相場に参加する人々の心理はそう大きくは変わらないだろうから、参考になる部分も多いはずだ。

 ガルブレイス氏は事実を淡々と描写していくことで大恐慌の様子を伝えているが、今回の暴落と似た状況もあって驚く。暗黒の木曜日(1929年10月24日)や悲劇の火曜日(1929年10月29日)の後、市場を落ち着かせるため石油王のロックフェラー氏は「米国経済の基礎的条件は健全であると信じます。(中略)そこで、ここ数日ほど、息子と私は健全な株を買っています」と発言(1929年10月30日)。この出来事は、投資家のバフェット氏が10月16日に「Buy American. I Am. (米国株を買いなさい。私は買っている)」と題してニューヨークタイムズに寄稿した状況と重なる。ちなみに大恐慌前、ダウ工業株30種平均は380ドルほどだったが、1932年には40ドル付近まで暴落している

 また、『大暴落1929』では「暴落から一週間経つか経たないかのうちに、横領罪を犯した社員の記事が毎日のように紙面をにぎわせるようになる」といったことも描かれている。株価が下落したことで、横領した公金で相場を張っていた社員がこっそりカネを戻せなくなったために発覚するのだ。

 この部分を読んでいて、ふと思った。こうした犯罪はどんな時代でもありそうな話なのだが、そういえば今回の暴落ではまだ耳にしていない。信用取引を行っている人も増えていて、追証を払うために犯罪に手を染めるということもありそうなのに。

 その理由を考えて、「もしかすると内部統制の強化が関係しているかもしれない」と筆者は思った。2008年4月1日から内部統制報告制度が適用されているが、このために不正が行いにくくなったことが影響しているのではないかと。

 実はアイティメディアでも内部統制が強化されており、経費精算など、さまざまな手続きが煩雑になっている。手続きに慣れていないことから、事務処理だけで1日がかりになることもあり、「負担がかかりすぎる」などと文句を言う人は多い。ほかの企業でも同様の話はよく耳にするが、犯罪の抑止力としては確かに有効。こうして横領のハードルが高くなったおかげで、うっかり犯罪に手を染めずに済んだ人もいるかもしれない。

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