座って触って気持ちいい理由――「椅子塾展300Chairs」郷好文の“うふふ”マーケティング(1/2 ページ)

» 2008年09月04日 11時30分 公開
[郷好文,Business Media 誠]
第10回椅子塾展ポスター

 椅子に座る時、どこに触りますか?

 背もたれを引き、ひじ掛けに手を置いて“よっこいしょ”とお尻を落とす……それだけ? いえいえ、椅子と人の五体の関係をよ〜く観察すると、実にいろんなことをしている。

 座面の縁をつかんだり、爪でコリコリする。ひじ掛けの先端をぐいっと握りしめる。座面とお尻との間に指を入れる。背もたれと背中の間に後ろ手を組む。太ももの肉を座面に押しつけて、リズミカルに“ぷよぷよ肉クッション”を楽しむ。こんな風に、椅子と五体はたくさん“コミュニケーション”している。そう感じたのは1日に100脚も椅子に座ったからだ。

「300Chairs」で感じたそれぞれの椅子の違い

 「腰を掛けて疲れる」というまれな体験をしたのは、リビングデザインセンターOZONEで開催された第10回椅子塾展「300Chairs」(8月16日〜26日)でのこと。椅子塾とは椅子デザイナーの井上昇さんが、椅子クリエイター養成を目的に10年間続けた塾である。約100人のクリエイターの作品300脚を一堂に展示した。

 椅子塾では、まず手描きの原寸図面から1/5モデルを作り、人間工学の見地からチェックした上で、原寸大に加工していく。塾生は本職のデザイナーから学生、勤め人までいる。

1/5スケールのミニチュアモデル

 作品を座り比べてみると、ひとつひとつ感触がかなり違う。肌ざわり・堅さ/柔らかさ・沈み・高さ・幅・角度など、座り心地とはこんなに多面的なものかと感心した。座れば座るほどモノづくりの奥深さのとりことなった。

 展示会のセミナー「デザインと製造」を聴講した。徳島の宮崎椅子製作所のオーナー宮崎勝弘さんと、宮崎椅子製作所と9年来コラボレーションしている椅子デザイナーの村澤一晃さん、進行役は井上昇さん。お話を聴いていると思わず姿勢を正し、“椅子を座り直してしまった”。

セミナー会場の椅子はすべて塾生の制作
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