椅子に座る時、どこに触りますか?
背もたれを引き、ひじ掛けに手を置いて“よっこいしょ”とお尻を落とす……それだけ? いえいえ、椅子と人の五体の関係をよ〜く観察すると、実にいろんなことをしている。
座面の縁をつかんだり、爪でコリコリする。ひじ掛けの先端をぐいっと握りしめる。座面とお尻との間に指を入れる。背もたれと背中の間に後ろ手を組む。太ももの肉を座面に押しつけて、リズミカルに“ぷよぷよ肉クッション”を楽しむ。こんな風に、椅子と五体はたくさん“コミュニケーション”している。そう感じたのは1日に100脚も椅子に座ったからだ。
「腰を掛けて疲れる」というまれな体験をしたのは、リビングデザインセンターOZONEで開催された第10回椅子塾展「300Chairs」(8月16日〜26日)でのこと。椅子塾とは椅子デザイナーの井上昇さんが、椅子クリエイター養成を目的に10年間続けた塾である。約100人のクリエイターの作品300脚を一堂に展示した。
椅子塾では、まず手描きの原寸図面から1/5モデルを作り、人間工学の見地からチェックした上で、原寸大に加工していく。塾生は本職のデザイナーから学生、勤め人までいる。
作品を座り比べてみると、ひとつひとつ感触がかなり違う。肌ざわり・堅さ/柔らかさ・沈み・高さ・幅・角度など、座り心地とはこんなに多面的なものかと感心した。座れば座るほどモノづくりの奥深さのとりことなった。
展示会のセミナー「デザインと製造」を聴講した。徳島の宮崎椅子製作所のオーナー宮崎勝弘さんと、宮崎椅子製作所と9年来コラボレーションしている椅子デザイナーの村澤一晃さん、進行役は井上昇さん。お話を聴いていると思わず姿勢を正し、“椅子を座り直してしまった”。
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