なぜ人はストレスを抱え、損ばかりするのだろうか?内藤忍インタビュー(1)(2/3 ページ)

» 2008年08月21日 09時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

内藤氏が提案する資産設計

 マインドセットとは何か? を説明する前に、まず内藤氏が提案する「資産設計」の概要を説明しよう。資産設計とは1年や2年といった短期運用ではなく、10年20年の長期運用のことを指す。

内藤氏が提案する「資産設計」

(1)投資する前に人生のミッション、ビジョンから「いつまでにいくら」という具体的な目標を設定する。

(2)最悪の事態にも耐えられ、年平均7%程度のリターンを目標とする分散されたポートフォリオによる運用。

(3)定期的にモニタリングと積立リバランスを続け、必要な金額を必要な時間までに実現していく仕組み。

(4)手間とストレスがかからず、長期で継続できる方法。

 投資を始める前にまずやるべきこととは、(1)の目標金額と達成時期を数値化することが必要だという。「目標が明確であれば資産設計を続けやすくなる。なんとなく資産運用をしている場合に比べ、損をしたからといって途中で止めることも少なくなるだろう」

 しかし「目標を明確に」と言われても、その目標が見つからない人はどのようにすればいいのだろうか。「まず自分が何をしたいのかを紙に書いていく。やりたいことをなんでも書いていけば、家族のことであったり、旅行のことであったり、自分の方向性が見えてくるはず。そして手帳などに書いておいて、気が変われば書き換えればいい。一度作った目標や夢は必ず守る必要はなく、ズレが生じれば修正して、自分にとってベストな目標とすることが大切」と話す。

投資と時給の関係を考える

マネックス・ユニバーシティの内藤忍氏

 少し話はそれるが、あなたは就職をしたときに、どんな基準で会社を選んだだろうか。「仕事が面白そうだから」「自分の能力が発揮できそうだから」「一流企業だから」など、さまざまな意見があるだろう。それではもし「手弁当(無収入)でいい?」と聞かれていたら、あなたは働いていただろうか。「経験のため」という理由で、短期間働く人はいるだろう。しかし将来のことを考えれば、給与をもらわなければ働くことはできない。社員として就職したときだけではなく、パートやアルバイトでも同じ。仕事には時給(または月給)が決まっている。

 「資産運用も(時間を使って)お金を手にするための手段のはずだが、時給という発想を持っている人は少ない。例えば100時間かかってAという銘柄を買い、その結果1万円の儲けがあっても、時給はわずか100円。しかもAの株価が上がらないかもしれないリスクがあり、この時給100円ですら、100%手にできるものではない。100時間かけてリスクを取った見返りが1万円ならば、時給800円のアルバイトをした方がベターな選択と考えることもできる」。内藤氏は、投資によって手にするリターンがリスクと時間に見合ったものであることが大切だという。

 効率的な投資を続けるためには、時給という概念を取り入れなければならない。例えば、一般的に集中投資(またはアクティブ運用)をするには情報収集が必要で、本や雑誌を購入したり、セミナーなどに参加したりと、コストと時間がかかるもの。一方の分散投資は株の比率を20%、外貨預金に10%……といった形で面白くはないかもしれない。しかし「どの株を買うか」「いつ買うか」といったことではなく、「どの金融商品にどれくらい投資するか」と効率がいいのだ。

 集中投資と分散投資にはそれぞれメリットデメリットがあるが、内藤氏は「まず人生の目標を定めることから始める」ことを強調する。そしてその目標を達成するためには「いつまでにいくら」を決め、それを実現するために効率的な方法を自分で見つけ出すことが大切だという。もし分散投資でも達成することが難しい目標であれば、「集中投資の方法を勉強してから投資を始めても遅くはない」としている。

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