リバイバルブームの訳は? 新規顧客開拓の一石二鳥効果保田隆明の時事日想

» 2008年05月08日 10時13分 公開
[保田隆明,Business Media 誠]

著者プロフィール:保田隆明

外資系投資銀行2社で企業のM&A、企業財務戦略アドバイザリーを経たのち、起業し日本で3番目のSNSサイト「トモモト」を運営(現在は閉鎖)。その後ベンチャーキャピタル業を経て、現在はワクワク経済研究所代表として、日本のビジネスパーソンのビジネスリテラシー向上を目指し、経済、金融について柔らかく解説している。主な著書は「実況LIVE 企業ファイナンス入門講座」「投資銀行時代、ニッポン企業の何が変わったのか?」「M&A時代 企業価値のホントの考え方」「なぜ株式投資はもうからないのか」「投資銀行青春白書」など。日本テレビやラジオNikkeiではビジネストレンドの番組を担当。ITmedia Anchordeskでは、IT&ネット分野の金融・経済コラムを連載中。公式サイト:http://wkwk.tv/ブログ:http://wkwk.tv/chou


 先日、担当している番組の特集で、最近のゴルフ市場が若返っているという話題を取り上げた。「ゴルコン」なるゴルフ合コンが流行っているらしく、若い女性の間でゴルフはちょっとしたブームとなっている(参照記事)

若い女性の間でゴルフが人気

 いつの時代も見た目から入るのが王道ということなのか。最近は女性ファッション誌でもゴルフファッション特集が組まれることが増えており、『Regina』(レジーナ)という女性のゴルフファッションの専門雑誌まで登場した。同誌のサブタイトルは『ハートが生まれるゴルフファッション誌』である(ちなみにハートは記号で表記されているので、もしかすると『ラブが生まれるゴルフファッション誌』かもしれない)。中身はワンピースやミニスカートのオンパレードで、「通常の合コンでも勝負しすぎでは?」と思うようなファッションも含まれている。

女性向けゴルフファッション誌『Regina』公式サイトのトップページ。「私たち、『スコアよりウェア』です!」のコピーにうなる。男には言えないセリフだ

女性が増えれば、男性もやってくる

 若い女性のそういったゴルフファッションを見て、往年のゴルファー世代である団塊世代の人たちは眉をひそめるかもしれない。しかし多くの男性にとっては、オシャレな若い女性がゴルフ場に増えるのは目の保養にもなるわけで、内心、文句はないのではないか。

 このゴルフブームの発端がどこにあるのか、正確なところは分からない。ただ思い返すと、チョイ悪オヤジ向けの男性ファッション誌で、若い女性と二人でゴルフを楽しむ“ツーサムプレイ”が特集されていたこともあったので、そのあたりもきっかけだったのかもしれない。

 若い女性のゴルフプレーヤーが増えれば、ゴルフが上手なオジサンは一躍“モテる人”に変身する。そうすると、最近はゴルフから遠のいていたものの、一度はゴルフクラブを握ったことのあるオジサン層がまたゴルフ場に戻ってくるという効果が発生する。業界にとっては、新規顧客層(=若い女性)を取り込むことで、かつての利用者たち(=団塊世代男性)を呼び戻すという効果があり、一石二鳥といえる。そしてこの効果は、他の分野でも最近見られる傾向である。

子供と大人を両方開拓する

 例えばアニメ市場では、今年の1月から「ヤッターマン」が放送されている。先日息子が見ていたのを何気なく眺めていたら、視聴者からのお便り紹介コーナーで、4歳や5歳の子供たちに交じってなんと39歳の人が投稿していた。「子どもの頃にヤッターマンを見ていたので懐かしい。ぜひ今の子どもたちにも、往年のテーマソングを聞かせてほしい」という投稿内容からは、懐かしみながらも今のリメイク版を楽しんでいる姿が想像できる。

 完全に子供向けの番組であれば、そのような39歳の人からのお便りを紹介するのは時間の無駄だ。しかし、敢えて“オジサンからのお便り”を紹介することで、他のオジサンたちの共感を呼ぼうとしていることは間違いない。番組は意図的に、新規視聴者の子供を開拓すると同時に、大人の視聴者の呼び戻しを狙っているのである。

 他にも、キリンレモンの新しいCMでは、かつての人気アニメ「巨人の星」が登場している。これもヤッターマンと同様の効果がある。子供たちにとって巨人の星は見たことのない新しいものである。しかも、体に変な機械を巻きつけた主人公のようすは、今の子供たちにウケるに違いない。しかし、大人にとっては懐かしい対象であり「再びキリンレモンを飲んでみようか」という気にさせる。

 これらの動きは、商品やマーケティングが対象顧客層ごとに細分化されてきた昨今の流れとは異なる。「Aをターゲットにするとそれに付随して呼び起こせるBはどこにいるか」という視点が、今後はより重要になってくる。

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