これまで銀行選びのポイントとして、預金金利にこだわることとATMの手数料を比較し、自分の生活圏に合ったところで口座を開くことをオススメしてきた。しかし預金金利は低く、「銀行に預けても大してお金は殖えない」といった不満もあるだろう。そこで、銀行からお金を借りるという視点で考えるのはどうだろうか。預金金利が低いということは貸出金利も低く、お金を借りるチャンスでもあるのだ。
→“いいとこ取り”の銀行選び――ATM手数料を比較する(前編)
「そろそろ念願の家を手に入れたい」と思っている人もいるだろう。「いくらの物件か」には注目しても、「どのように返済していくか」はあまり気にしない人もいる。しかし金利のことをあまり考えずに住宅ローンを組めば、“大きな損失”につながるかもしれないので要注意だ。
現在の長期金利は歴史的に見て超低金利である。今後の金利動向を予測することは難しいが、ここでは金利上昇のリスクを考えてみよう。例えば2500万円を返済期間35年で、住宅ローンを組んだとする。金利が年3.00%の場合、毎月の返済額は9万6213円だが、金利が年4.00%になると毎月の返済額は11万694円となる。「月々の返済額は1万5000円ほどしか増えないので大丈夫」と目先のことだけで判断するのではなく、トータルで考える必要があるのだ。
住宅ローンを組む場合、月々の返済額も大切だが、総返済額(返済期間35年)にも注目したい。2500万円を年3.00%で借りた場合、総返済額は1.62倍の4041万円。これに対し年4.00%であれば、総返済額は1.86倍で4649万円となり、金利が1%違うだけで608万円の差が出てくるのだ。
マンションや一戸建てのチラシで「頭金なし、月々の返済○万円。今の家賃と比べてみてください」といった内容を見たことはないだろうか。しかしこれは変動金利で計算していることが多く、固定金利と比べ安い返済額を記載していることがあるのだ。変動金利は市場金利に基づいて金利を見直しており、現在の超低金利で住宅ローンを組んだ場合、月々の返済額は安くなるが、もし金利が上昇すれば金利の負担が増し返済額が増えることになるのだ。
金利 | メリット | デメリット |
---|---|---|
変動 | 現在、超低金利のため、月々の返済額を安くできる。 | 将来、金利が上昇すれば、月々の返済額が高くなる。 |
固定 | 将来の返済額が決まっているので、計画が立てやすい。 | 返済当初の金利は高い。 |
それでは住宅ローンを組む場合、変動または固定どちらの方がいいのだろうか。ファイナンシャルプランナーの熊谷一志氏は「金利が上昇しても返済できるだけの資金を持っている人は別ですが、一般的には住宅ローンのすべてを変動で組むのはリスクが大きい」と指摘する。そこで住宅ローンの組み方のポイントを挙げてもらった。
ケース1.長期固定のみローン種類/合計 | 金利 | 借入額 | 月々返済額 | ボーナス返済額 |
---|---|---|---|---|
35年固定 | 3.0% | 3500万円 | 9万6225円 | 23万940円 |
合計 | − | 3500万円 | 9万6225円 | 23万940円 |
ローン種類/合計 | 金利 | 借入額 | 月々返済額 | ボーナス返済額 |
---|---|---|---|---|
10年固定 | 2.2% | 1000万円 | 3万4160円 | − |
35年固定 | 3.0% | 2500万円 | 5万7735円 | 23万940円 |
合計 | − | 3500万円 | 9万1895円 | 23万940円 |
長期固定(3.0%)のみで借り入れた場合、月々の返済額は9万6225円でボーナス時に23万940円となる。一方ミックスプラン(長期固定+10年固定(2.2%)の場合、月々の返済額は9万1895円でボーナス時に23万940円。
あまり違いはないように感じるが、長期固定のみとミックスプランを比べると、10年間の返済額の差は51万9600円、さらに10年後の残債の差は23万7943円。長期固定のみで借りるより、ミックスプランの方が合計75万7543円の節約となるのだ。
「金融機関で住宅ローンを組む場合、金利に注目するのは大切ですが、同時に繰上返済の手数料を比べてください。繰上返済手数料が無料の金融機関があるので、金利と両にらみをしながら、どこで住宅ローンを組むか決めるといいでしょう」(熊谷氏)と話す。
主な銀行の住宅ローン金利はどうなっているのだろうか。変動金利と固定金利も掲載しているので、比べてみて欲しい。
金融機関名 | キャンペーン名 | 変動金利(%) | 当初3年(%) | 当初5年(%) | 当初10年(%) | 固定20年(%) | 固定30年(%) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
三菱東京UFJ銀行 | 優遇金利 | 1.675 2.875 |
1.75 3.15 |
1.75 3.25 |
1.95 3.60 |
2.70 4.40 |
2.98 − |
三井住友銀行 | 全期間固定ローンなど | − | − | − | 1.95 | 2.70 | 2.99 |
年1%優遇ローン | 1.875 2.875 |
2.15 3.15 |
2.25 3.25 |
2.45 3.45 |
− − |
− − |
|
みずほ銀行 | 優遇金利 | 1.875 2.875 |
2.15 3.15 |
2.20 3.20 |
2.50 3.50 |
2.60 4.30 |
2.73 − |
りそな銀行 | 優遇金利 | 1.875 2.875 |
1.65 3.15 |
1.75 3.25 |
2.10 3.60 |
− 4.40 |
− − |
新生銀行 | 長期固定金利など | − 1.90 |
1.163 1.85 |
1.498 2.35 |
1.793 2.60 |
2.363 − |
2.628 − |
10年間特約つき変動金利 | 1.10 | − | − | − | − | − | |
ソニー銀行 | 金利優遇 | 1.629 2.529 |
1.775 2.675 |
1.917 2.817 |
2.335 3.235 |
2.623 3.523 |
2.770 3.670 |
金融機関名 | 借りる時の手数料 | 保証料 | 繰上返済手数料(一部) | 繰上返済手数料(全額) |
---|---|---|---|---|
三菱東京UFJ銀行 | − | 60万5610円など | 6300円(変動) 8400円(固定) |
1万1550円(変動) 2万9400円(固定) |
三井住友銀行 | − | 60万5610円など | 0円 | 0円 |
みずほ銀行 | − | 60万5610円など | 5250円(変動) 1万500円(固定) |
5250円(変動) 5万2500円(固定) |
りそな銀行 | − | 60万5610円など | 1万5750円(変動) 4万2000円(固定) |
1万500円(変動) 6万3000円(固定) |
新生銀行 | 5万円 | − | 0円 | 0円 |
ソニー銀行 | 4万2000円 | − | 0円 | 0円 |
住宅ローンを30年固定で借りる場合、最も金利が低いのは新生銀行の年2.628%、次いでみずほ銀行の年2.73%、ソニー銀行の2.770%。できるだけ早く住宅ローンを返済したいという人は、繰上返済手数料が無料の銀行を選ぶ方がいいだろう。
前回にも紹介したが、金融機関の選び方は“いいとこ取り”をオススメしている。いいとこ取りのポイント3つを挙げると、預金金利、ATM手数料、住宅ローン金利(繰上返済手数料)になる。預金金利は一般にネット専業銀行が高く、ATM手数料については新生銀行が安く、住宅ローンも新生銀行の金利が低い。
→“いいとこ取り”の銀行選び――ATM手数料を比較する(前編)
しかしこれはあくまで現時点での話で、現実の金利がどう変動するかは分からない。また住宅ローンの優遇金利を適用するためにはいくつかの条件が必要となる上、年収などの審査があるため、必ずしも低金利の金融機関で借りられるとは限らない。
ここで挙げた金融機関は一部に過ぎないので、自分が口座を持っている銀行と比べるなど参考にしてほしい。繰り返しになるが、預金金利が高くATM手数料が安いといった理由だけで金融機関を選べば、逆に使い勝手が悪くなることもあるので注意が必要だ。
家づくりコンサルティング、代表取締役。CFP・1級FP技能士、宅建建物取引主任者。大学卒業後、大手住宅メーカー勤務、2003年独立系FP事務所へ転職、2006年家づくりコンサルティング設立。LECリーガルマインド、近畿大学、大阪経済大学で講師を務める。
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