“いいとこ取り”の銀行選び――お金を借りる視点で考える(後編)銀行選びのポイントは貸出金利

» 2008年04月21日 17時18分 公開
[フィナンシャルリッチ特集取材班,Business Media 誠]

 これまで銀行選びのポイントとして、預金金利にこだわることとATMの手数料を比較し、自分の生活圏に合ったところで口座を開くことをオススメしてきた。しかし預金金利は低く、「銀行に預けても大してお金は殖えない」といった不満もあるだろう。そこで、銀行からお金を借りるという視点で考えるのはどうだろうか。預金金利が低いということは貸出金利も低く、お金を借りるチャンスでもあるのだ。

 →“守りながら攻める”普通預金&定期預金の使い方

 →“いいとこ取り”の銀行選び――ATM手数料を比較する(前編)

金利1%の差で大きな違い

 「そろそろ念願の家を手に入れたい」と思っている人もいるだろう。「いくらの物件か」には注目しても、「どのように返済していくか」はあまり気にしない人もいる。しかし金利のことをあまり考えずに住宅ローンを組めば、“大きな損失”につながるかもしれないので要注意だ。

 現在の長期金利は歴史的に見て超低金利である。今後の金利動向を予測することは難しいが、ここでは金利上昇のリスクを考えてみよう。例えば2500万円を返済期間35年で、住宅ローンを組んだとする。金利が年3.00%の場合、毎月の返済額は9万6213円だが、金利が年4.00%になると毎月の返済額は11万694円となる。「月々の返済額は1万5000円ほどしか増えないので大丈夫」と目先のことだけで判断するのではなく、トータルで考える必要があるのだ。

歴史的に見て、現在の金利は低い(出展:イーローン)

 住宅ローンを組む場合、月々の返済額も大切だが、総返済額(返済期間35年)にも注目したい。2500万円を年3.00%で借りた場合、総返済額は1.62倍の4041万円。これに対し年4.00%であれば、総返済額は1.86倍で4649万円となり、金利が1%違うだけで608万円の差が出てくるのだ。

返済期間35年で金利2%と5%を比べると、1821万円違ってくる

住宅ローンはミックスプランがオススメ

 マンションや一戸建てのチラシで「頭金なし、月々の返済○万円。今の家賃と比べてみてください」といった内容を見たことはないだろうか。しかしこれは変動金利で計算していることが多く、固定金利と比べ安い返済額を記載していることがあるのだ。変動金利は市場金利に基づいて金利を見直しており、現在の超低金利で住宅ローンを組んだ場合、月々の返済額は安くなるが、もし金利が上昇すれば金利の負担が増し返済額が増えることになるのだ。

金利 メリット デメリット
変動 現在、超低金利のため、月々の返済額を安くできる。 将来、金利が上昇すれば、月々の返済額が高くなる。
固定 将来の返済額が決まっているので、計画が立てやすい。 返済当初の金利は高い。

 それでは住宅ローンを組む場合、変動または固定どちらの方がいいのだろうか。ファイナンシャルプランナーの熊谷一志氏は「金利が上昇しても返済できるだけの資金を持っている人は別ですが、一般的には住宅ローンのすべてを変動で組むのはリスクが大きい」と指摘する。そこで住宅ローンの組み方のポイントを挙げてもらった。

ケース1.長期固定のみ
ローン種類/合計 金利 借入額 月々返済額 ボーナス返済額
35年固定 3.0% 3500万円 9万6225円 23万940円
合計 3500万円 9万6225円 23万940円
ケース2.ミックスプラン
ローン種類/合計 金利 借入額 月々返済額 ボーナス返済額
10年固定 2.2% 1000万円 3万4160円
35年固定 3.0% 2500万円 5万7735円 23万940円
合計 3500万円 9万1895円 23万940円

住宅ローン組み方、長期固定のみとミックスプラン

 長期固定(3.0%)のみで借り入れた場合、月々の返済額は9万6225円でボーナス時に23万940円となる。一方ミックスプラン(長期固定+10年固定(2.2%)の場合、月々の返済額は9万1895円でボーナス時に23万940円。

 あまり違いはないように感じるが、長期固定のみとミックスプランを比べると、10年間の返済額の差は51万9600円、さらに10年後の残債の差は23万7943円。長期固定のみで借りるより、ミックスプランの方が合計75万7543円の節約となるのだ。


住宅ローン金利と繰上返済の手数料を両にらみで比べる

 「金融機関で住宅ローンを組む場合、金利に注目するのは大切ですが、同時に繰上返済の手数料を比べてください。繰上返済手数料が無料の金融機関があるので、金利と両にらみをしながら、どこで住宅ローンを組むか決めるといいでしょう」(熊谷氏)と話す。

 主な銀行の住宅ローン金利はどうなっているのだろうか。変動金利と固定金利も掲載しているので、比べてみて欲しい。

金融機関名 キャンペーン名 変動金利(%) 当初3年(%) 当初5年(%) 当初10年(%) 固定20年(%) 固定30年(%)
三菱東京UFJ銀行 優遇金利 1.675
2.875
1.75
3.15
1.75
3.25
1.95
3.60
2.70
4.40
2.98
三井住友銀行 全期間固定ローンなど 1.95 2.70 2.99
  年1%優遇ローン 1.875
2.875
2.15
3.15
2.25
3.25
2.45
3.45


みずほ銀行 優遇金利 1.875
2.875
2.15
3.15
2.20
3.20
2.50
3.50
2.60
4.30
2.73
りそな銀行 優遇金利 1.875
2.875
1.65
3.15
1.75
3.25
2.10
3.60

4.40

新生銀行 長期固定金利など
1.90
1.163
1.85
1.498
2.35
1.793
2.60
2.363
2.628
  10年間特約つき変動金利 1.10
ソニー銀行 金利優遇 1.629
2.529
1.775
2.675
1.917
2.817
2.335
3.235
2.623
3.523
2.770
3.670
※下段に表示している金利は標準金利。
※標準金利は各行が基本とする金利。優遇金利はいくつかの条件を満たせば適用される。
※2008年4月13日現在
金融機関名 借りる時の手数料 保証料 繰上返済手数料(一部) 繰上返済手数料(全額)
三菱東京UFJ銀行 60万5610円など 6300円(変動)
8400円(固定)
1万1550円(変動)
2万9400円(固定)
三井住友銀行 60万5610円など 0円 0円
みずほ銀行 60万5610円など 5250円(変動)
1万500円(固定)
5250円(変動)
5万2500円(固定)
りそな銀行 60万5610円など 1万5750円(変動)
4万2000円(固定)
1万500円(変動)
6万3000円(固定)
新生銀行 5万円 0円 0円
ソニー銀行 4万2000円 0円 0円
※保証料は返済期間30年、3000万円を借りた場合。
※一部繰上返済は1000万円未満の場合。
※全額繰上返済は1000万円以上の場合。
※2008年4月13日現在
※初出ではソニー銀行の繰上返済手数料を2100円としていましたが、2008年1月から「0円」でしたので、変更しました。

 住宅ローンを30年固定で借りる場合、最も金利が低いのは新生銀行の年2.628%、次いでみずほ銀行の年2.73%、ソニー銀行の2.770%。できるだけ早く住宅ローンを返済したいという人は、繰上返済手数料が無料の銀行を選ぶ方がいいだろう。

いいとこ取りのポイントは預金金利、ATM手数料、住宅ローン

 前回にも紹介したが、金融機関の選び方は“いいとこ取り”をオススメしている。いいとこ取りのポイント3つを挙げると、預金金利、ATM手数料、住宅ローン金利(繰上返済手数料)になる。預金金利は一般にネット専業銀行が高く、ATM手数料については新生銀行が安く、住宅ローンも新生銀行の金利が低い。

 →“守りながら攻める”普通預金&定期預金の使い方

 →“いいとこ取り”の銀行選び――ATM手数料を比較する(前編)

 しかしこれはあくまで現時点での話で、現実の金利がどう変動するかは分からない。また住宅ローンの優遇金利を適用するためにはいくつかの条件が必要となる上、年収などの審査があるため、必ずしも低金利の金融機関で借りられるとは限らない。

 ここで挙げた金融機関は一部に過ぎないので、自分が口座を持っている銀行と比べるなど参考にしてほしい。繰り返しになるが、預金金利が高くATM手数料が安いといった理由だけで金融機関を選べば、逆に使い勝手が悪くなることもあるので注意が必要だ。

熊谷一志(くまがい・かずし)

家づくりコンサルティング、代表取締役。CFP・1級FP技能士、宅建建物取引主任者。大学卒業後、大手住宅メーカー勤務、2003年独立系FP事務所へ転職、2006年家づくりコンサルティング設立。LECリーガルマインド、近畿大学、大阪経済大学で講師を務める。


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