親子3代で利用する“日本版プライベートバンク”は成功するのか?金融資産1000万円以上の世界(1/2 ページ)

» 2008年04月03日 15時21分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 「プライベートバンク」(PB)という言葉を聞いて、どんな銀行を想像するだろうか? いろいろな解釈があるものの、一般的にはリッチ層を対象にした、“資産管理のための”銀行といえよう。PBは他の金融機関と同じように預金や投資信託などを扱っていて、顧客が保有する金融資産の相談業務に力を入れているところが多い。中には金融商品以外に美術品の保管や医療関係の世話をするPBもあるが、基本的には長期的な視野に立ち、顧客の金融資産を運用または“守る”といったサービスを展開している。

メンバー専用のラウンジでコーヒーを飲むことができる

 ロンドンに本店があるHSBCグループは、83の国と地域に1万超の拠点があり、1億2500万人にサービスを提供している。あまり知られていないがHSBCグループの母体である香港上海銀行は、日本で140年以上の営業を続けており、日本で最も長い歴史を持つ銀行だ。そのHSBCは1月、金融資産1000万円以上を持つ人を対象にした「HSBCプレミア」を赤坂と広尾にオープン。「プライベートに配慮して個室を設け、担当者が顧客のニーズに合わせた資産形成を手伝っていく」(広報部)という。

 PBというと一般庶民には“縁遠い世界”といったイメージがあるが、実際の店舗はどうなっているのか? またリッチ層たちはどんなサービスを受けることができるのか? その知られざる世界を紹介しよう。

高度な専門知識がなければ、顧客の対応は難しい

 これまでHSBCは、法人向けに金融サービスを提供してきた。しかし金融資産1000万円以上を保有する個人客を見込んで、赤坂と広尾に出店したところ「予想を上回る口座開設と問い合わせがあった」(HSBCグループ香港上海銀行、スチュアート・ミルン在日代表)。HSBCでは、金融資産1000万円以上の個人客が東京・大阪で630万人と試算している。4月には「横浜支店」と「丸の内支店」をオープン、年内には東京で2店、大阪で1店を出店する計画だ。

 急速に店舗を増やしているHSBCプレミアだが、一体どのようなところなのか? ここでは1月31日にオープンした、広尾支店の様子やサービス内容を紹介しよう。

キャッシュカードをかざせば口座情報を認識してくれる(左)、メンバー専用のラウンジ(右)、

 まず入店するとレセプションデスクがあり、それは金融機関の店舗というより、ちょっとしたホテルのフロントをイメージさせる。レセプションデスクの端末には非接触ICカードのリーダーを備え、キャッシュカードをかざせば、口座情報を認識し、顧客が来店したことを担当者に知らせてくれる。

 メンバー専用のラウンジでは飲料サービスや新聞・雑誌が読めるなど、空港のラウンジのようだ。またHSBCプレミアの顧客になると、海外に250カ所以上ある店舗で、日本と同等のサービスを受けられる。例えばラウンジに設置している電話にキャッシュカードをスライドするだけで、自動的に日本のコールセンターにつながるのだ。24時間365日オペレーターと日本語で話せるので、現地の言葉がしゃべれない人にとっては心強いだろう。

指をかざすと生体認証が登録できる(左)、個室でキャッシュカードの暗証番号が登録できる(右)

 広尾支店では、個室で金融資産のことを相談できるコンサルティングルームを6ブース設置。「顧客の運用状況などを1時間〜1時間半ほどかけて、ゆっくりと相談に応じる。高度な金融知識がなければ、顧客に対応することはできないので、行員のスキルアップは欠かせない」(松田克弘支店長)

 このほか暗証番号の登録やキャッシュカードの生体認証登録用の部屋を完備。初めての顧客でも、生体認証を登録したキャッシュカードが即日で発行される。この機械を導入しているのは、国内でHSBCプレミアが初めてだという。

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