ボジョレー・ヌーボー解禁は景気回復の追い風になる? 保田隆明の時事日想

» 2007年11月15日 10時16分 公開
[保田隆明,Business Media 誠]

著者プロフィール:保田隆明

やわらか系エコノミスト。外資系投資銀行2社で企業のM&A、企業財務戦略アドバイザリーを経たのち、起業し日本で3番目のSNSサイト「トモモト」を運営(現在は閉鎖)。その後ベンチャーキャピタル業を経て、現在はワクワク経済研究所代表として、日本のビジネスパーソンのビジネスリテラシー向上を目指し、経済、金融について柔らかく解説している。主な著書は「M&A時代 企業価値のホントの考え方」「投資事業組合とは何か」「なぜ株式投資はもうからないのか」「株式市場とM&A」「投資銀行青春白書」など。日本テレビやラジオNikkeiではビジネストレンドの番組を担当。ITmedia Anchordeskでは、IT&ネット分野の金融・経済コラムを連載中。公式サイト:http://wkwk.tv/ブログ:http://wkwk.tv/chou


 11月の第3木曜日といえば、ボジョレー・ヌーボーの解禁日。そう、今日(11月15日)がちょうど解禁日なのだ。14日深夜、都内各所では0時に向け、年末イベントを思わせるカウントダウンと解禁を祝う各種イベントが催された。私もカウントダウンイベントに参加して今年のボジョレーを飲んできた。今年の出来栄えはあまりよくないと聞いていたのだが、正直な印象としては普通においしかった。

ユーロ高で値上がりし、輸入量は前年比減

 ボジョレー・ヌーボーはバブル期の遺産だという声をよく聞くが、実はバブル後も輸入量は年々増加しており、2004年がピークだった。それ以降は年々減ってきているものの、それでも2007年の予測は82万ケース(1ケース=750ミリリットル×12本)。過去に比べても非常に高いレベルとなっている。

 2007年はユーロ高の影響で、ボジョレー・ヌーボーの値段が5%〜10%ほど値上がりしている。それを受けてメルシャン、サントリー、サッポロなど、各社とも入荷量を前年より減らしており、ボジョレー・ヌーボーの入荷量は昨年比15%ダウンの予測となっている。

 ボジョレー・ヌーボーの話題になると、いわゆる“ワイン通”が「ボジョレー・ヌーボーなんて飲むもんじゃない」と言うのをよく聞く。「現地では500円〜800円程度で売られているものが飛行機で空輸されてくるため、他のワインより割高になっている」というのがその理由だ。特に今年は為替、原油高(飛行機の燃料アップ)の影響を受けて値上がりしているため、ますますその傾向が強い、と。

 しかしそんな声をあざ笑うように、今年は高価格帯のものが売れ行きがいいようで、消費者が量より質を追い求めるようになっている様子が伺える。そもそも日本人のワイン観は高級志向(別記事参照)だから、“量を絞って値段で勝負”という企業側の作戦も、うまく合致しているのだろう。

どうして日本でこんなに売れる?

 日本は、ボジョレー・ヌーボーの輸出量の約半数を占める、世界でダントツ1位の輸入国である。解禁モノ好き(秋葉原でもゲームの新ソフトやマイクロソフトの新OSが発売されるときは行列ができる)、新しいもの好き(「獲れたて」という言葉に弱い人は多い)、お祭り好きな国民性や、時差の関係上日本は世界で最も早く解禁されるという優越感など、さまざまな理由はあるだろう。しかし個人消費が伸び悩む中では、このようなイベント的な消費の盛り上がりは景気回復の追い風となる。

 内閣府が先日発表した7月から9月までの3カ月間のGDP成長率は、年率換算で2.6%と高いものだった(参照リンク)。しかし個人消費の回復は本格的とは言えず、引き続く注意深く見守る必要があるという状況である。購入頻度の高い食料品や生活品が値上がりする一方で給与は増えず、今年のボーナスは一部では前年比マイナスという予測が出る始末で(別記事参照)、街角景気指数はマイナスが続いている。

 出だしは高価格帯の売れ行きが良いといわれる今年のボジョレー・ヌーボーであるが、今後ユーロ高の影響で値上げしたボジョレーを見送る人が増えてくると、景気実感はますます悪化する可能性もある。

 もっとも、ボジョレーは年に一度の消費物な上、イベント的要素が強いので消費量が多少減ったところで大きなインパクトはないかもしれない。しかしヨーロッパからの輸入品は、ユーロ高の影響で相次いで値上げされている。ミネラルウォーターやチーズ、アパレル、高級ブランド製品など、年間を通じて消費されるものの売れ行きが今後気になるところである。

 イベントでユーロ高の影響を吹き飛ばすことができるのか? 今後の景気の先行きを占う意味でも、今年のボジョレー・ヌーボーの売れ行きは注目である。

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