基本は“メイン2枚+サブカード”――誠世代のカード整理術(前編)独身、夫婦ではどう持つのが賢い?

» 2007年10月29日 02時07分 公開

 社会人になると、クレジットカードの取得を勧められる機会が多くなる。銀行口座を開設すればキャッシュカード一体型カードを勧められ、百貨店やスーパーで自社ブランドのクレジットカードを勧めてくるのは当たり前。ガソリンスタンド、鉄道会社、航空会社もカード勧誘に熱心だ。社員証にクレジットカード機能が付いている、という人もいるだろう。

 あなたはいったい何枚のクレジットカードを持っているだろうか。

 ジェーシービー(JCB)の調査資料によると、社会人のクレジットカード平均所有枚数は3.3枚、携帯している平均枚数は2.0枚だという。「3枚以上のカードを持っていて、よく使うのは2枚」という人が多いようだ。

 実際の利用シーンを鑑みても、よく使うカードが複数に分散すると、ポイントがなかなか貯まらないし、カードの支払いがバラバラになって「いくら使ったのか分かりにくい・使いすぎる」などのデメリットも生じる。クレジットカードには発行元によって様々な特典があり、ついたくさん作りたくなってしまうが、“上手にまとめる”のが重要なのだ。

 →クレジットカードのススメ――達人のカード術に学べ!

 →クレジットカードの基礎知識

 →誠世代のカード整理術 (前編):本記事

 →誠世代のカード整理術(後編)

将来のステージを見据えたカード選び

 本誌読者の多くは、20代後半から30代。この世代のカード選びについて考えたとき、大切になるのが“将来のライフステージを見据えた戦略”だ。

 30代はビジネスとプライベートの両面で大きな転機を迎えることが多い。仕事では重要な役割を担うことが増え、社会的なステータスが上昇。プライベートでは結婚し、子供を持つ人が増えるだろう。人生が大きくステップアップする直前のスタートライン――それが20代後半から30代という年代だといえる。

 クレジットカードを選ぶ上でも、この時期は1つの転機だ。多くのクレジットカード会社が、25歳〜30歳をゴールドカード発行の目安にしている。社会的ステータスが上がり、年会費無料カードではなく、プロパーカードやゴールドカードが欲しくなるのも、この時期からだろう。

 また、一部の大手クレジットカード会社は、ゴールドカードの上に「プラチナカード」と呼ばれる上級カード(ステータスカード)を用意している。プラチナカードは“プロパーのゴールド会員の中から優良な顧客を選び、カード会社がインビテーション(招待)する”ことで発行される。プラチナカードの審査基準は各社非公開だが、ゴールドカードの利用期間や利用履歴が参照されることは間違いない。近い将来、プラチナカードが欲しいという人にとって、「どのゴールドカードを選ぶか」が1つの登竜門といえる。

 このような背景を踏まえて、誠世代に最適なカード所有パターンを「メインカード2枚(ゴールド+一般)+サブカード」と定義してみた。所有枚数の基本は3枚、多くても4枚以下に抑えるのが本誌のお勧めである。以下、カードの定義やジャンルの呼び名については、別記事「クレジットカードの基礎知識」を参照してほしい。

メインカード1枚目はオールラウンドに使えるものを、2枚目はブランドを重視

 まず、メインカード1枚目はゴールドカードとし、その上(プラチナカード)を狙うことも視野に入れたい。ゴールドカードは決済限度額が高く、空港のラウンジが使えるなど特典内容が充実している。保険や保証内容も厚い。ビジネスからプライベートまで、オールマイティに使える。しかしその一方、年会費は1万円以上と高いものがほとんどなので、複数枚持っているとコストパフォーマンスが悪い。最も利用スタイルに合っており、なおかつ決済額の多いメインカード1枚をゴールドにするのがよい。

 メインカード2枚目はゴールドカードを機能や特典で補完するもので、こちらは提携カードが最適となるケースが多くなる。例えば、銀行系プロパーゴールドがメイン1枚目で、Suica/PASMOのオートチャージ機能を使いたいから鉄道系一般カードをメイン2枚目にする、といった形である。

 もう1つメインカード2枚目で重要になるのが、メインカード1枚目の“ブランド補完”である。最近では、日本国内なら5大ブランドすべてに対応した加盟店が大半になったが、海外に行くと地域ごとに加盟店の多さに差が出てくる。そのためメインカード1枚目が「JCB」ならば、2枚目は「VISA」といった具合に、メインカード2枚は異なるブランドで構成した方がいいだろう。

メインカード1枚目はオールマイティに使えるゴールドカード(シティゴールドカード)を、2枚目のメインカードは機能重視でビックカメラSuicaカードを選んだ例。写真のように、VISA+JCBなど異なるブランドにしたほうが何かと便利

 最後のサブカードは、“特定の場所・状況に限定して、サービス・特典がどうしても見逃せない”ものを可能なかぎり絞り込んで持つのがよい。流通系やネット&ポイント系のクレジットカードには、購入時の割引が受けられたり、倍以上のポイントがつくものが多い。日常的に使うお店で、かつ年会費無料カードがあるならば、サブカードで持つことを検討してもいいだろう。しかし、サブカードをたくさん持ちすぎると、ポイントや与信枠が分散し、あまりお得にならない。そのためサブカードの数は、“利用頻度が高い店舗/場所で、特典が大きいもの”に限定し、枚数も2枚程度までとするべきだ。

夫婦で持つなら、ゴールドカードを家族会員で

 読者の中には、すでに結婚している人もいるだろう。特に共働きの誠世代夫婦であれば、夫婦で金銭管理の一部を共有しながらも、別々にお金やカードの管理をしているケースも少なくないはずだ。

 夫婦でのクレジットカード所有は、どうするのが得策だろうか?

 まず、独身者と既婚者の大きな違いは、クレジットカードの家族会員制度が使えることである。この仕組みでは、本人会員の審査で発行されたカードのオプションとして、家族名義のクレジットカードが発行される。この場合、グレードや与信枠、サービス内容は本人会員に準じる場合が多い。例えば、本人会員がゴールドカードで150万円の与信枠(限度額)があれば、家族会員もこの枠内から利用することになる。

 家族会員の大きなメリットは、ずばり年会費だ。これはカード会社によって違いがあるが、家族会員の年会費は本人会員の半額程度である場合が多く、また家族会員枠1人分は無料としている会社もある。これは年会費の高いゴールドカードでは重要な要素になる。例えば、本人会員が年会費1万5千円のゴールドカードなら、家族会員の年会費は7000〜8000円程度で済む。さらにプラチナカードになると、本人会員の年会費は5〜10万円と高額だが、家族会員の年会費は無料が多い。年会費の高いカードほど、家族会員で持った方がお得なのだ。

 このように夫婦・家族でクレジットカードを持つならば、ゴールドやプラチナなど年会費の高いメインカード1枚目は、家族会員を組んで持つのが得策だ。本人会員は夫婦どちらでも構わないが、ここで貯まるカードポイントは共有化されるので、使い方はあらかじめ相談しておいた方がいいだろう。

 メインカード2枚目やサブカードは、サービスやポイント、特典の内容を重視して、夫婦で別々のカードを持つといいだろう。特に提携カードはサービスや特典が厚いので、夫婦で同じカードを持つよりも、バラバラに違うカードを作って幅広くメリットを得た方がお得になる。

「使いすぎ」を防ぐテクニック

 所有するクレジットカードを3枚以下に減らし、利用をメインカード2枚に集中させれば、毎月の利用状況や支払いの管理はグッとしやすくなる。しかし、それでも油断は禁物。メインカードに与信枠の大きいゴールドカードを持っていたりすると、つい気が大きくなって使いすぎてしまうことはある。また、メインカード2枚目やサブカードの利用が思いの外あり、月末の支払い時期に3枚分の請求額を合算し、慌ててしまうなんてこともあるだろう。

 そこで“使いすぎ”を防ぐために、2つのテクニックを実践しよう。

 1つめは「Web明細」機能の活用だ。これはクレジットカード各社の会員サイトに用意されているもので、自分の利用状況をWebサイト上で確認できる。ここでは請求確定前の明細をチェックすることができ、自分がどれくらいクレジットカードを使っているか、また次回の請求額はどのくらいかが分かる。加盟店からの請求が上がるタイミングによってWeb明細の内容にタイムラグが生じることもあるが、おおよそ「現時点でいくらくらいカードを使っているか」が分かるのだ。また家族カードを作っている場合は、家族の利用状況も把握できる。1週間に1度程度のタイミングで、所有するすべてのカードのWeb明細をチェックするといいだろう。

Web明細機能では最新利用履歴はもちろん、家族会員の利用もチェックできる。「自分では使っていないはずなのに、妻がたくさん使っていて月末にビックリ」といったケースを避けられるわけだ(クリックすると全体を表示)

 もう1つの使いすぎ防止策は、利用限度額を自ら減らしてもらうことである。クレジットカードの限度額はカード会社の判断で設定されており、利用しつづけることで上がっていく。これを「引き下げる」ことは会員が依頼すれば可能である。また、海外出張や旅行、大きな買い物などで大きな利用枠が必要なときは、電話や会員サイトで申請すれば一時的に利用枠が大きくなる「臨時増枠」という仕組みも用意されている。普段から利用限度額が大きいと油断して使いすぎてしまうことが増えるので、毎月のカード利用で必要な金額以上の限度額は、自ら申請して下げてもらうと使いすぎ防止になる。

 この「限度額の引き下げ」は、特にメインカード2枚目やサブカードで、利用する店舗や利用額が決まっている場合に有効だ。例えば、メインカード2枚目やサブカードに、石油系や、Suica/PASMOチャージ目的の鉄道系、日常の買い物で使うための流通系のクレジットカードを充てているなら、限度額は20万円以下で十分だろう。

 また、利用限度枠には買い物で使うショッピング枠とは別に、お金を借りる「キャッシング枠」というものもある。こちらも使わないなら、限度額を引き下げるか、ゼロにしてしまおう。もし海外出張や旅行、急な接待などでキャッシングの必要性があるというなら、メインカード1枚目にのみキャッシング枠を設定し、他のカードは減額するかゼロにするといい。複数のクレジットカードにキャッシング枠が分散してあると、こちらも“油断して借金してしまう”可能性があるからだ。

大切なのは、クレジットカードを「使いこなす」こと

 クレジットカードはとても優れた決済ツールであり、上手に使えば、消費者にとって便利かつお得なものになる。しかし、その一方で、無計画に多くのカードを所有し、下手な使い方をすると、損をしたり、最悪の場合は自らの信用を傷つけることにもなりかねない。社会人として、クレジットカードをきちんと使いこなせるかどうか。それが大切なのだ。まずメインカード1枚を決めて、合計3枚のカードを使いこなすところから始めるといいだろう。

 では、具体的にどのような組み合わせで、メインカードとサブカードを選べばいいのだろうか? 後編では、主なニーズや用途別にパターンを考えてみたい。

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