“麻生銘柄”は一夜の夢? 思惑買いにご用心

» 2007年09月13日 18時24分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]
安倍首相の辞任は、どこまで市場に影響があるのか

 安倍晋三首相の突然の辞意表明を受け、9月12日の日経平均株価は一時155円高の1万6032円を付けた。次期首相として、アニメに詳しい麻生太郎自民党幹事長が就任するのではないかという思惑から、12日はアニメ制作会社のプロダクション・アイジー(証券コード:3791)やGDH(証券コード:3755)の株価が大幅に上昇(9月12日の記事参照)。さらに気泡コンクリート大手の「麻生フォームクリート」(証券コード:1730)の株価もストップ高、かつて麻生氏が社長だった時期もあったことから、買いが殺到した格好だ。

 安倍首相が辞任、次の首相は麻生幹事長――後継者をめぐる情報が交錯した中で売買高が増えることを「思惑買い」という。実際に企業にとって好材料がない中で、憶測やうわさなどで買いが殺到する。そもそも麻生フォームクリートは、9月5日から5営業日連続で売買がなく、ふだんは売買高の少ない銘柄だ。現在、麻生氏との関係について同社では「関係はない」と否定した。

 思惑買いについてトレーダーズ・アンド・カンパニーの田中一実アナリストは「誰かが先に連想して、買いが増えていく現象。しかし、その後は高値を買って損をするという“ババぬき”が始まる。つまりマネーゲームにすぎない」と指摘する。もし後継者に谷垣禎一氏の名前が挙がれば、「谷垣氏の趣味はサイクリング。自転車銘柄が思惑買いされていたかもしれない」(同)と話す。

 ちなみに“谷垣銘柄”として、自転車関連株を調べてみた。自転車専門チェーン店のあさひ(証券コード:3333)は、12日に前日比2.44%増だったが、13日は同−1.2%の1660円。ただ自転車関連の株は少ないし、他の銘柄にも目立った動きがなかったところを見ると、谷垣氏をめぐっての思惑買いは“なかった”といえそうだ。

思惑買いは“危険”

 安倍首相辞任の辞意表明から1日たった13日の東京株式市場は、前日比23円安の1万5821円だった。売買高は15億6210万株、売買代金も18営業日連続で下落し3兆円を割った。売買高が少ない理由についてマネックス証券投資情報部の清水洋介氏は「9月18日に開かれる日銀の金融政策決定会合と米連邦公開市場委員会(FOMC)で決定される金利の動向に、市場関係者は注目している。そのため13日の市場は、様子見ムードが漂っていた」とコメント(9月3日の記事参照)。安倍首相の辞任と市場の関連性については「経済政策が大きく転換しない限り、株価への影響はない」と断言した。

 12日に思惑買いで株価を上げたプロダクション・アイジーは、13日の終値が前日比−5.21%の9万2800円、GDHは同−5.54%の4万8550円、麻生フォームクリートは同−3.85%の375円とそれぞれ下落した。ある証券関係者は「こういった銘柄は買わない方がいい。遊びにしては“危険”すぎる」と注意を促していた。

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