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不眠の原因はココロにある?――快眠セラピスト 三橋美穂氏に聞いてみた

三橋美穂氏は“快眠セラピスト”という肩書きを持ち、講演、執筆、個人相談、企業のコンサルティング(ベッドメーカー、寝具メーカー)、ホテルの客室のコーディネート業などを行っている、いわば“眠り”の専門家だ。4年前に寝具メーカーを退職し独立。いままで蓄積したものを活かそうと、快眠セラピストとしての仕事を始めた。開業当初は、月に3日程度だった仕事の依頼も、半年を過ぎてホームページを開設した頃から軌道に乗り始め、取材はもちろん、企業や個人から問い合わせが入ってきたという。この頃から世間が「快眠」に目覚め始めたことがうかがえる。個人相談内容は、眠れないということをきっかけにして、メンタルの面に繋がることがほとんどとのこと。「ほかにもいろいろな要素はありますが、一番大きな要素は心ですね」(同氏)。そこで同氏にストレスと眠りの関係を聞きつつ、快眠指南を仰いだ。

心地よい眠りを楽しむために
三橋美穂氏

――まず快眠と不眠、それぞれどんな状態なのでしょうか

三橋美穂氏(以下、敬称略): 快眠といえるのは、寝つきがよく、ぐっすり眠れ、朝起きたときにすっきりしているという状態のことです。反対に不眠は週2日以上、眠れないことがあって、その人がそれに対して苦痛に思っている状態のことをいいます。

――それでは心地よい眠りを楽しむコツを教えてください

三橋: 寝具とかパジャマとか寝ている時に使うものを、肌触りがいいものにすることでしょうか。また、自分の体型に合った、楽に感じる枕やマットレスを選ぶといいですよ。

――具体的にどういった寝具を選んだらいいでしょうか

三橋: 枕とマットレスの場合は、自分の体型に合わせて、立っているときの自然な姿勢を保てるもの。自分ではなかなか選べないので、アドバイザーがいるお店でアドバイスを受けながら買うといいと思います。もうひとつ大事なのが、仰向けで寝ても横向きで寝ても楽で、“寝返り”がしやすいということ。ベースにはある程度の硬さがないと、グニャっと沈んでしまい寝返りが打ちにくいんですよ。マットレスは、通常コイルでできていて、その中でも面で支えているものと、点で支えているものに分けられます。どっちかというと、点で支えるコイルの方が、重いところは沈むし、軽いところは浮くので、バランスよく使えると思います。

――寝返りはなぜ重要なんですか

三橋: ひとつは寝ている間の血行を良くするということ。もうひとつは蒸れを防ぐということです。同じ場所でずっと体が布団に接していると、そこの部分の毛細血管が切れてきたり、そこが蒸れてきたりするので、それを寝返りを打ちながらそれを調整しているんです。それから寝返りは、睡眠中のノンレム睡眠とレム睡眠という、深い眠りと浅い眠りの切り替えをスムーズにさせる役割があるといわれています。以前実際に自分の寝姿をビデオで撮ってみたことがあるんですが、寝返りは、やはりノンレム睡眠とレム睡眠が切り替わるタイミングに寝返りが多いことが分かりました。だから、あまり寝返りを抑えてしまうような寝具は良くないんです。ただ、横向きでも仰向けでもいろんな姿勢をとりますし、寝つきが一番大事。寝つきがいいかどうかで眠りの質が決まってくるので、眠るときに自分が安心だと思える姿勢が一番いいと思います。

ストレスと不眠の関係性

――ストレスが不眠に繋がることがあるんでしょうか

三橋: 基本的には、ストレスがかかると長く眠ります。ストレスの元になっている(必要のない)記憶を消去するのは睡眠中なので。でもそのストレスの元になっている出来事が、気になって眠れないという風に現れる場合もあります。何って言う明確な原因がないストレスもあります。見えない不安ってあるじゃないですか。将来自分はどうなっていくんだろうとか、世の中どうなってしまうのかっていう。意識していない不安というのも、知らず知らずにストレスとして、蓄積されていたりします。また多いのが専門的にいう「精神性理性不眠」。眠れないことが続くと、今日も眠れなかったらどうしようという気持ちになって、眠れないスパイラルに入ってしまうことがあります。

三橋美穂氏

――不眠の悩みを解決する方法はありますか

三橋: そういう時は睡眠時間を短くすることが効果的に働くこともあります。睡眠の目的というのが、心身の疲労回復ということを考えると、体や頭を使って疲れていれば疲れているほど寝ますよね。要するに寝ないと命の危険がありますから、起きている時間が長ければ寝てしまうんですよ。例えば8時間という睡眠をとろうとして、「寝れない、寝れない」というのだったら、いっそのこと7時間、6時間に減らしてみる。その中で効率よく寝るようにしてみたらいかがでしょうか。それにずっと動かず寝ていたら、睡眠の欲求は高まらないですよね(笑)。年配の方でいつも眠れないという人が、旅先ではぐっすり眠れたというケースがありました。要は旅行に行くと早く起き、観光などでたくさん歩き回る。友達とおしゃべりして、夜おいしいものを食べて温泉にでも入ったら、ぐっすり眠れてしまうもんなんですよ。

――最低何時間は睡眠をとらなければならないとよく聞きますが

三橋: 適切な睡眠時間は人によって違いますし、季節や精神状態によっても変わるので、日中に何か支障がなければ、時間は関係ありません。頭がボーっとして注意力がないとか、体がだるくてだるくて仕方がないということがなければ大丈夫。長く寝すぎると疲れることもあるし、時間がものすごく不規則な場合も原因となりますから。オススメしたいのが、起きているときにできるだけ太陽の日の光を浴びること。2500ルクス以上の光を浴びることによって、夜寝るときにメラトニン(睡眠ホルモン)たくさんが分泌されるんです。反対に電気やTVをつけっぱなしでいると、眠りが浅くなります。寝ているときもまぶたを閉じていても、眼球は光を察知してしまう。そうすると深く眠ることはできません。暗くて眠れないという人は、豆電球程度の方がいいでしょう。真上よりは足元を照らしたり、間接照明を使うことが効果的です。

――最後に快眠のアドバスをお願いします

三橋: 1つ2つ、ストレスの解消方法を身に付けておくことでしょう。これをやるとすっきりするというものを、日ごろから身に付けておくといいと思います。それは、スポーツをしたりして、エネルギーを発散することでも、静かに音楽でも聴きながら読書をすることでも構いません。どれが自分に合っているのかというのを見つけながら、いい方法を探っていってもらえればと思います。

取材協力 快眠セラピスト 三橋美穂 プロフィール:自動車メーカーでのマーケティング職を経て渡英。帰国後、寝具メーカーのロフテーに入社。商品開発や眠りのアドバイザー、マーケティング、広報などを経験後、研究開発部門所長を経て、2003年に独立。執筆業、ベッドメーカーのコンサルティングや、ホテルの客室コーディネイトなど、企業の睡眠関連事業にも携わっている。
URL: http://sleepeace.com/(三橋美穂の快眠情報サイト「スリーピース・カフェ」)
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取材・文/+D Style編集部
撮影/香野 寛