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人気フードライターがそれぞれの角度から斬る!“ミシュラン斬り”
日本の“通”が語る、ミシュランガイド東京

 「東京は、食材の質の高さや料理ジャンルの多さ、シェフの優秀さなど、他に類をみない洗練された食文化が存在する都市だと認識しています」。今年6月に行われた「第9回フードジャーナリスト会議」(http://blog.livedoor.jp/foodjournalist/archives/54282118.html)で、ミシュランガイド6代目総責任者 ジャン=リュック・ナレ氏が にこやかにコメントしたのは、記憶に新しい。

 それでは実際に日本で活躍している人気フードライターたちは、当のミシュランのことをどう思っているのだろうか。

 先ほどご登場していただいた大崎さんと柳生さんをはじめ、

・3万人の読者を誇る大人気メルマガ発行・OLランチのカリスマ「OL美食特捜隊」さん
・「東京カフェマニア」主宰・ALL Aboutカフェガイド「川口葉子」さん
・東京カリ〜番長調理主任「水野仁輔」さん
・焼肉探求集団「YAKINIQUEST」さん
という、いずれも食の各分野で活躍している第一人者たちに、忌憚のないコメントをうかがった。

東京ランチレボリューション選者

ミシュランに対するコメント

下井美奈子

掲載されたレストランすべてに星が付き、星の価値が下がっているように見受けられます。これだと星のつかなかったレストランとの比較もできず、「取材したお店全てに星をつけたのかしら?」と思ってしまいます。フランスの歴史があり威厳あるミシュランの価値が下がってしまったようで残念です。
また、同じ経営者系列のお店ばかりに星がついているのも不思議。
ただ「良いワインリスト」があるか否かが表示されているなど、海外からの旅行客にとっては非常によいガイドブックと言えます。東京が世界の美食の街の一つとして広まっていくことは嬉しいですね。

大崎裕史

日本料理はあまり得意じゃないので行ってないし、今後もあまり行かないつもりだが、「日本だから日本料理が多いのは当然」なのか、ちょっと疑問。6割も占めるのはどうかと思う。残り4割の中で行ったのが24軒。もちろん私ごときが知らない店も多数あったが選定にはそんなに驚かなかった。ちょっとだけ「そうかな?」と思う★の数もあったけど。
ミシュラン効果というのが経済的にあるようなので東京版が発行されたことはいいことだと思う。買ってないし、買う予定もないけど。

小関敦之

あくまで東京を訪れる旅行者向けのガイドブックとして作られた本。生活者の使い勝手を完全に無視したセレクションで、議論も多いと思うが、東京版の発売は「ミシュランとはそういう本である」ということを実感させてくれた、いい機会だったのでは!? その上で、東京が"最も星を獲得したレストランの多い街"に選ばれたのは、素直に誇りに感じていいと思う。
ただ、この本のランキングが東京のレストランの序列を決める絶対的な尺度ではなく、旅行者向けにミシュランが選んだ1つの基準にすぎないことは常に念頭においておくべきだろう

水野仁輔

かの高名なフレンチシェフのミシェル・トロワグロ氏は、来日時にボクの知人にこんな言葉を残している。「日本で一番好きな食べものはカレーだ」と。寿司でも天ぷらでも蕎麦でもない。あのカレーライスである。「フレンチはメインの素材を引き立てるためにソースがある。その脇役であるソースが主役を演じる料理を私は日本のカレー以外に知らない」
残念ながらミシュランTOKYOにカレー店の名はなかった。1店でも掲載されていたら、ボクは『東京ランチレボリューション』を差し置いてミシュランを絶賛していたかもしれない。

YAKINIQUEST

焼肉店が1つも載っていない。これは寂しいの一言に尽きます。
焼肉が日本人の生活や食文化の中にどれだけ深く根ざしているか。あるいは焼肉「料理」の1ジャンルとしてどれほど完成されたものなのか……もしかしたら審査員の方々はそのあたりを深く追求されなかったのではないかな、と。
機会があればぜひ、ミシュランガイドの総責任者であるナレ氏を我々がリスペクトする焼肉店にお連れしたいですね。きっと焼肉を世界に通用する食として認めていただけると思いますよ。

柳生九兵衛

「ここぞ」という時にちょっと奮発してごちそうを食べに行く。なんて時に参考にするのにはいいかも知れないけど、紹介されている店があまりにも高級店ばっかりすぎ。
もちろん、高くてもうまいものを食べたいという方もいらっしゃるし、それがいけないといってる訳ではありません。でも、カレーやラーメン、うどん、そば、回転寿司などの店は一切載っていないし、安くてうまいものをこよなく愛する私にとっては、まったく実用的なガイドブックではありませんね。まさに「そんなの関係ねぇ!」って感じ(笑) でも、せっかくだから高級店の内観写真集としてでも眺めてみますよ(笑)

 いかがだっただろうか。

 以上のフードライターたちに加え、

・美食の王様・ALL About食べ歩きガイド「来栖けい」さん
・ALL Aboutうどんガイド「蓮見壽」さん

らが執筆陣に加わり、何と!ミシュラン発売前日に、迎え撃つかのように出版されたのが、「東京ランチレボリューション」である。

 “ワンコインからグランメゾンまで”
 “人気店から穴場店まで”
 “ガッツリ定食からシャンパンブランチまで”

 食の達人たちが、それぞれの得意分野で「ここぞっ!」というランチスポットをセレクト。 “選者別インデックス”があるのは、それぞれのエキスパートのファンにとってはうれしい。食べ歩きをなりわいとする彼らの“お気に入りの一店”を垣間見られるのもさることながら、もより駅からの道順が書いてあるなど、かゆいところに手が届く使い勝手のよさも実現している。鞄に忍ばせておけば使える1冊であること間違いなしだ。

東京ランチレボリューション

「東京ランチレボリューション」(東京書籍)  1365円

毎日のお昼ごはんを劇的に変える、東京ランチガイドの決定版。
食べ歩きの達人らが、自らの足で探し、自らの舌で味わい、自信を持ってオススメするお店を8つのオフィスエリアに分けて厳選。

 ミシュランで星を獲得した店は、現在も電話が繋がらない状態だそうで、フィーバーぶりはまだおさまりそうもない。その一方で、相乗効果により、外食ブーム全体の熱が盛り上がってきており、ミシュランに掲載されていなくても、混雑する店も多くなってきた。多くの人の関心が“食”へ向かっていることは確かである。

 「東京ランチレボリューション」。この一冊で、もう新しい店開拓に悩むことはない。「新しいランチを開拓してみない?」――堂々と、気になる彼女を誘ってみよう!

取材・文/華麗叫子
企画・構成/似鳥陽子