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旬の野菜で大地の息吹を直接細胞に吸収する
ニューウェーブな“おふくろの味”――「Veggie」

今回の特集の冒頭で書いたように、そもそもの“薬膳”の本来の意味は、体調や季節、その土地の気候などの要素によって、その時にいちばんからだに良い食べもののパワーを取り入れて病気を防ぐという「未病」を目的としている。

「未病に良いのは、バランスの良い食事と、旬の野菜を豊富に摂ることです。現代人……特に働く男性は、どうしても野菜が不足がちになりますよね。そこでオススメしたいのが、専門知識を持った野菜ソムリエがいるお店。最近、都内には、野菜を中心にした料理を出すお店がどんどん増えています」(漢方スタイルプロデューサー・朝比奈さん)

野菜ソムリエレストランの人気は、サプリメントだけでは摂取できない“自然の力のビタミン・ミネラル”を欲している人が増えていることのあらわれだろうか。

銀座に昨年の春オープンした「Veggie」のオーナーである大熊美佐子さんは、もともとは主婦だったのだそう。

「私にはふたりの娘がいるのですが、いつも忙しそうで、何が食べたいのか聞くと、ふたりとも口を揃えて“野菜がたくさん食べたい!”と答えるんです。一人暮らしをしている方は、一回の食事で多くの種類の野菜を食べることはなかなか難しいですよね。だから、そんなお店を作ってたくさんの方に元気になってもらえればと思い、家族に相談したんです」

「Veggie」

東京都中央区銀座1-23-2-1F
03-3563-8310
11:30〜14:00
17:30〜22:00
日祝休

http://www.go-veggie.net/

Veggie
Veggie本日のおすすめ01

「Veggie」のメニューは、シーズンごとの準レギュラーが25種類ほどと、黒板にかかれたものが10種類ほどで、大熊さんの友人たちが作っている旬の有機野菜を中心に構成されている。

「まず、箱いっぱいに詰まったお野菜の顔を見てから、何を作るか考えます」

一皿の料理に、平均すると5〜7種類ほどの野菜が使われる。素材のストックがなくなるとその品は終わりなので、メニューの入れ替わりは頻繁で、一度逃してしまうと次のシーズンまでお目にかかれないものも。

Veggie本日のおすすめ02

外食産業に勤めた経験はなかったものの、懐石料理を勉強し、ホームパーティで大勢の来客に振るった腕前はいつも大好評だったという大熊さん。料理の味付けは素材の味を生かした薄味で、お醤油のかわりにニョクマムを使うなど、和風にアレンジされたアジアンテイストのものが多い。

「ベトナムに旅行した時に、ハーブやお野菜をふんだんに使う現地のお料理にすっかり魅了されたんです。とはいえ、あちらは熱帯で日本には四季がありますから、旬を大切にしたいと思っています。オープンしてまだ1年ですが、『このお店に来ると、たくさんの種類の野菜が食べられるね』と、ふらっとひとりで来てくださる方は男性と女性の区別無く多いんですよ」

野菜とお客への愛情がいっぱいの大熊さんの料理は、ニューウェーブな“おふくろの味”ともいえる。

野菜とお客への愛情たっぷりの大熊さんの笑顔に癒される
野菜ソムリエによる“美と健康を追究した料理”――「けなりぃ」

こちらも今年3月に銀座にオープンしたばかりの韓国串焼と鉄板台所のレストラン「けなりぃ」。取締役社長の石崎弘美さんは、フードコーディネーターやライター、外食産業のコンサルタントなど、食に関するビジネスの先端を走り続けてきた。

「けなりぃ」

東京都中央区銀座5-11-13 ニュー東京ビルB1F
03-6226-0630
11:30〜15:00(L.O. 14:30)
17:30〜04:00(L.O. 03:00)
年末年始休

http://www.kenary.jp/

けなりぃ

「新店のオープンは300店以上を手がけました。そういった仕事を手がけていると、2〜3年先のトレンドが見えてきますよね。『自分のお店を開きたい!』と強く思った時に、絶対に、女性の永遠のテーマ『美容と健康』にしたいと思いました。それで、野菜ソムリエの資格を取得したんです」

長年積み重ねたプロフェッショナルな経験から「食を通して美と健康を追究する」というコンセプトに到達し、満を持して同店をオープンした石崎さん。その目線は、ビジネス的なコンセプトにとどまらず、食の深い本質と愛情へ注がれている。

「当店は韓国料理がベースになっていますが、日本の食文化である季節感を大切にしています。美味しいお肉を串焼きで1本から少しづつ頂きながら、野菜をたくさん食べることができるので、男性のお客さまにも大変好評なんですよ」

取締役社長の石崎弘美さん
けなりぃ〜フード〜

食の“おいしさ・うれしさ・楽しさ”を大切にする石崎さんは、今夏に向けて新たな試みを予定しているのだそう。

「からだに良いものといっても、ただ漢方素材を入れました、何々を入れましたという“なんちゃって”では駄目だと思っています。そのためにスタッフ一同で薬膳の本質を勉強会を行って学び、季節やお客さまの体質に対応した食を提案できるようにしていきたいと思っています」

「たとえば夏ですと、外は暑いのに室内はエアコンでからだが冷えて、体調が不安定になりますよね。そういった不調が、うちの店に来て美味しいものを食べれば元気になる。また、お客さま個々の体質をチェックし、それに合ったものをお出しする。この夏からはそういった取り組みを行っていく予定です。遊び心で体質チェックして欲しいです」

まだ始まったばかりの試みだが、石崎さんの意欲は高い。

「30〜40代の男性は、健康への意識がすごく高いです。なのに薬膳が男性に敬遠されがちなのは、“口に合わない”とか“値段が高い”というネガティブなイメージがあるから。当店では、“何が入っているかよくわからないけれど、あそこの料理は美味しくて元気になれるね”という薬膳を目指して『美容と健康』というテーマのひとつのアイテムとして取り入れていきたいと思っています」

漢方薬会社がノウハウを直伝する薬膳から、中華料理店、カフェ、ダイニングまで、薬膳の裾野はどんどん広がっている。こんなレストランを何軒かデートや飲み会、合コンの時などのチョイスに加えておけば、自分も元気になれるし、女性から感謝されて一目置かれることは間違いない!

似鳥陽子(にたどり ようこ)
姫オーラ研究委員会(http://princess-aura.net)」主催
東チベットで活仏に会ったり、重慶で市長と面談し「重慶日報」に載るなど、ちょこっとDeepな中国を体験。著書にメッセージブック『Deep Blue 〜何もいいことがなかった日は〜』(PHP研究所)。今年、小説を出版予定。東京を舞台に暗躍する北朝鮮と中国の思惑に日本のハッカーが立ち向かい、そこになぜか元ホストと売れっ子風俗嬢の情愛がからみます。乞うご期待……してくださるとうれしい。

取材・文/似鳥 陽子
取材協力/朝比奈千穂( http://www.kanpo-style.com